01


あれから一週間が経ち、その間にシュウは様々なことを習得していた。
例えば、改造により与えられた能力を使えば、パチンコ店のスロットから収入を得られることが分かった。金銭的な問題が解決すれば、その他の大体の問題も同時に解決したようなものであり、いまのところ生活に困ることはなさそうである。

しかし、今はそれが弊害を生んでいた。

「これからどうしようか……」
この日も大量のメダルを景品と交換、換金したシュウは、パチンコ店を出たあと無気力に空を見上げた。今は昼間。今日が終わるまであと12時間以上ある。
研究所にいるとき、自由になりたいと思ったことは何度もあるが、ここまで自由な時間がありすぎると逆に憂鬱である。自由になったとき、いったい何をするのかは、全く考えていなかったということを、この状況になってはじめてシュウは気がついた。

「どうせ逃がすなら、何で博士も一緒に来なかったかな」

せめて誰かと一緒だったなら、話し相手くらいにはなっただろうに。
そんなことをぼやきながら、あまり過ぎる時間に途方にくれていたとき、道行く人々のなかで、ある人物に目がとまった。
銀髪、長身、猫背な男が車道の向こう側、ちょうどシュウの正面の歩道を歩いている。

(なんか、あの人……)

妙に気になる。
自分と他国籍の人間だから、と言う理由ではなく、とにかくその銀髪の男が明らかに周りとは違って見えた。

(浮いてるって言うより、違う種類の人間……みたいな)

自分でも良く分からない感覚に、シュウが戸惑っているうちに、その男は少し先の横断歩道を渡り、こちら側の歩道へ渡ってきた。

「うーん……」

シュウは、自分がいる場所とは反対の方向へと歩いていく男の後姿をしばらく見つめた後、よし、とひとり心を決めて男の後を追い始めた。いけるところまで、後を付けてみることにした。

(どうせやることもないし、バレたら適当に誤魔化してナンパしよう)
これはただの暇つぶし、そんな軽い気持ちでいた。


←00  02→

夢置き場へ

「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -