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別れ際に渡されたスタジャンのポケットには、4ツ折の茶封筒が入っていた。封筒の中には限界まで万札が詰められていた。
「なにこれ……」
あまりの事にうろたえつつ改めて中身を確認すると、札束の間に白い紙が挟まっているのを見つけた。
つまんで引っ張ってみると、数枚の万冊と共に抜けたそれは数枚の便箋だった。
読み上げてみる。

「『きみは廃棄処分される予定であったが、どうしても私には君を殺すことは出来ない。だから私は……』」

その一文から始まる手紙を読み進めていくうちに、自分の状況と、この封筒がなんなのかがだんだんと分かってきた。

『君は私が廃棄処分したと報告する。追われることはないだろう。こんなところに置き去りにしてすまない。封筒の中身はせめてもの手向けだ。こんなことで償いになるとは思わないが、受け取って欲しい。』

博士からの手紙の最後はそう締めくくられていた。
色々唐突過ぎて信じられない。感覚がついていけない。

「不法投棄。」

ひねた冗談を思い付いてしまった。呟いても反応するひとがいない、全て独り言なのが少し寂しい。

「これからどうしよう……」
さっき散らかしてしまった数枚の万冊を拾い上げて唸っていたら、お腹も唸った。
「とりあえず、なにか食べようかな。」

サイボーグだって、腹が減る。



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