サービスデー


「ただいまー……」

数日会社に泊まり込み、やっと帰ってこれた我が家は懐かしい。
やっとゆっくり休めるという安心感が、さらに家へのいとおしさを加速させる。

「お疲れさん、毎度毎度大変だな」

生気ゼロの私を見て、玄関で出迎えてくれたアルベルトが笑った。


「風呂は沸いてるからすぐ入れるぞ」

「じゃあお風呂入る……」

「夕飯は?」

「上がったら直ぐ寝たいからいいや……」

「そうか。入りながら寝るなよ」

「うん……」

脱衣場でだらだらと服を脱いで、髪を纏めて浴室に入る。ざっと体を洗って、湯船で暖まってから上がったら、パジャマとか替えの下着とかが用意されていた。
そういえば、持って入るの忘れてた。
アルベルトが用意してくれたんだ。


「アルベルト、着替えありがと」

「お、上がったか。少し顔色が良くなったな」

「お風呂に入ったら目が冴えちゃった。でも明日お昼過ぎに起きるの嫌だからもう寝る」

「そうか」

「ん」

やり取りを終えて、自室に入ろうとしたとき、ふと思いついた。

「アルベルト」

「なんだ」

「明日の朝食ベーコンエッグとシュガーバタートーストがいい」

「……わかった」

明日も至れり尽くしてくれるみたいだ。

「今日と明日はアルベルトサービスデーだね」

「なんだそれは」

「アルベルトが至れり尽くしてくれる日、今日みたいな」

「あぁ」

アルベルトは、わたしの頭をぽんぽんと軽く叩いた。

「シュウは疲れて帰ってくるだろうから、出来る限りのことはしてやろうと思ってな」

「じゃあアルベルトが疲れて帰ってくる時は、シュウサービスデーにするよ」

「そりゃあ楽しみだ」

笑うアルベルトをみて、あぁ、帰ってきたなぁと改めて感じる。

「さ、疲れてんなら早く寝ろ」

「うん、お休みアルベルト」

「お休み」

数日振りのアルベルトとの会話を、ここで打ち切るのは名残惜しかったけれど、今日はここまでにしよう。

だって、寝たいし、なにより目が覚めて明日になっても、アルベルトは側にいるし。

その方がなんだかとても贅沢な気がする。


「あ、」

「どうした」

「下着のしまってあるとこ、どうしてわかったの?」

「………外に干してあった物だ。」

ああ、私が会社に行く前に洗濯してったやつか。

「てっきりアルベルトがタンスの中から選んで持ってきたのかと」

「早く寝ろ」




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