しん、と冷たい空気が張りつめた2月の真夜中。 なかなか暖まらない布団の中で微睡んでいると、静かに部屋の襖が開いた。 『……異三郎』 「どうしたんです」 『寒くて眠れないの』 そうとう冷えているのか、僅かに声が震えている。 「少し待っていてください」 布団から出ると冷たい空気が体にまとわりついた。 湯のみにポットからお湯を注ぎ、粉末の生姜茶を入れてかき混ぜる。 冷え性の彼女のためにと部屋に用意しておいて正解だった。 「飲めば暖まりますよ」 『ん。ありがと』 湯のみを差し出すと、こくこくと喉を動かし、すぐに飲みほした。 『ぽかぽかしてきた。ねぇ、一緒に寝ても良い?』 「もちろんですよ」 先に布団に入ると、後を追い、ぴったりと私の体にくっついた。 微かに触れた指先はまだ冷たかったが、体の密着した所からじんわりと熱が広がっていった。 「眠れそうですか?」 『うん。異三郎、あったかい』 「そうですか。…おやすみなさい」 返事の変わりに閉じられた瞼の上に、そっと唇を落とす。 犬や猫にするように、体を優しく撫でていると、すぐに寝息が聞こえてきた。 相変わらず頬に触れる空気は刺すように冷たいが、二人の体温を閉じ込めた布団の中は暖かい。 愛しい温もりを感じながら、私も静かに目を閉じる。 ゆらりゆらりと、心地よく思考が沈んで行った。 柔らかな夢の中へ ----------- お母さんみたいな佐々木さん。 |