柔らかな陽の差し込む午後。ある人物を探しながら屯所内を歩く。 いつもの倍近くの仕事をこなしたせいで、今日は非常に疲れた。 ……居た。 『あ、異三郎。お疲れさま』 仕事を放棄した不届き者は、屯所の縁側で呑気に茶を啜っていた。 「ええ。誰かさんが仕事をしないせいで、とても疲れました」 『酷い人がいるんだねー』 「貴女ですよ、貴女。しっかり働いてくれないと困ります」 『ねえ、異三郎。なんで空って青いのかな?』 空を見上げ、唐突に話の腰を折る。 「私の話を聞いていますか?」 バカは死んでも治らないと言うが、それは本当だと思う。 その証拠に、この女はいつまで経ってもバカなままだ。 『異三郎って、ドーナツの穴から見てもステキね』 またもや唐突に、こちらにドーナツを突き出して言う。 「そうですか。貴女をドーナツの穴から見たら更にバカに見えるでしょうね」 『空から飴玉でも降ってこないかなー』 「……」 もぐもぐとドーナツを頬張るなまえの頭上に、ポケットに入っていた飴玉を投げ付けてみる。 すると、落ちてきた飴玉を凝視した後、顔を輝かせて空を見上げた。 ……面白い。 「それを食べたら、仕事に戻りなさい」 『バナナの皮って本当に滑ると思う?』 今度はどこからかバナナの皮を取り出し、その上に乗りだした。 私が、危ないと言うよりも早く、なまえがひっくり返った。 『いてて。本当に滑った!』 「怪我をしたらどうするんですか。……ほら」 起こしてやろうと手を差し伸べると、嬉しそうに笑って握手をしてきた。 救いようのないバカに愛の手を ------------ バカって言うか、思いついた事をすぐ口にしちゃう不思議ちゃん。 |