※一応バレンタインのお話。





お茶とお菓子を乗せたおぼんを手に、屯所の廊下を進む。

目的の部屋の前で立ち止まり、すぅ、と大きく息を吸い込む。

『佐々木さーん、開けてくださーい!』

声をかけると、襖が開き佐々木さんが出てきた。

「なんですか?」

『お茶を入れてきました!少し休憩しましょう』

「ああ、もうそんな時間ですか」

少し疲れたように言う佐々木さん。

『働きすぎは良くないですよ』

部屋の中に入り、机の上におぼんを置く。

「そうですね。いただきましょう」

座布団の上に座ると、佐々木さんもその隣に腰を下ろした。

「チョコレートですか」

『今日はバレンタインですからね!佐々木さんチョコ好きですか?』

「……食べられますよ、一応」

小さな箱の中からチョコを取り出し、口にふくむ佐々木さん。が、すぐに眉間にシワが寄る。

「……甘いですね。喉が焼けそうだ」

『嫌いなら食べなくていいんですよ!お茶を飲んで……わっ』

突然、ぐいっと腰を引き寄せられる。

「いや、こうすればいいんです」

『んっ……』

そっと唇が重なり、そのままがっしりと後頭部を固定されてしまった。

佐々木さんの舌が私の唇をなぞり、するりと口内に入り込んでくる。

同時に、溶けかけのチョコが私の口内に移り、動きまわる舌と舌の間でゆるゆると絡まる。

むさぼるような佐々木さんの熱い舌に、頭がくらくらする。

『んんっ…』

苦しくなって佐々木さんの肩を押すと、名残惜しそうに私の唇をひと舐めして離れた。

口に溜まった二人分の甘い唾液を飲み込むと、どろりと喉の奥に絡みついた。

『は、ぁ……。佐々木、さん』

力が上手く入らず、佐々木さんの胸にもたれ掛かる。

「美味しかったですよ」

少し激しかったですか?と大きな掌が私の頭を優しく撫でた。

「もっと、食べたいんですが……」

『ちょっと待っ……んん』

乱れた息を整えていると、再び唇が重ねられた。


結局、持ってきた全てのチョコが二人の熱い口の中で絡まって溶けた。




どろりとあまい



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さぶちゃんのキスシーンが書きたかっただけっていう。一応バレンタイン設定。

title by『空をとぶ5つの方法』さま

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