※現代設定のつもり 気だるい体を半分だけベッドから起こして、ブラウンのカーテンを少し開くと、結露がびっしりと窓を覆っていた。 カビの生える原因になってしまうものだけれど、街灯の明かりを受けた水の粒は、まるでそれ自体が発光しているかのようにちらちらと輝いている。 「綺麗ですね」 『……ん』 隣で横になっていた異三郎が同じように半分だけ体を起こして、私のむき出しの肩を毛布でふわりとくるんだ。 そっと窓をなぞる。つう、と水滴が一筋、滑り落ちた。 何だかたまらなく切なくなって、氷を触ったのと同じくらいに冷たくなった指先で、今度は異三郎の頬をなぞる。 「冷たいですよ」 『……あなたみたいね』 「おや、心外ですね。私はそんなに冷たくはありませんよ」 『ううん、冷たいわ。あなたの体はいつも』 「体が、ですか?」 『そう。でもね、』 喉、鎖骨、肩、胸、と鍛え抜かれた逞しい体をゆっくりと撫で下ろし、広い背中に腕を絡ませて裸の体をぴたりと密着させる。 私の背中にも、異三郎の腕が絡みつく。大きな手のひらで肩甲骨を撫でられる心地良さに自然と瞼が重たくなる。 『こうしていると、どんどん暖かくなってく。裸で抱き合ったとき、あなたは他の誰より暖かいの』 「……そうですか」 しばらくの間、お互い無言で触れ合った肌から広がるぬくもりを感じていた。 脈打つ鼓動のリズムが一緒になって、二人でひとつの生き物になったのかと錯覚しそうになり始めた頃、異三郎が口を開いた。 「……私は、いつもあなたから体温を分けてもらっているんです」 『え……?』 「あなたが居なければ、私の体は冷えきってしまう」 異三郎が私の首筋に顔をうずめ、背中に回した腕に力をこめた。 抱き締めていると言うより、しがみついているみたいで異三郎がいつもより少し幼く見える。 『じゃあ、ずっとそばにいるわ。あなたが凍えてしまわないように』 耳元で、異三郎がふっと微笑んだのがわかった。 暖かな朝日が冷たい窓の結露をすべて流し尽くしてしまうまでは、ふたり抱き合ったままお互いの熱を分けあっていよう。 重なる温度 --------------- ピロートークみたいなかんじ。いつもより、少し大人な夢主にしてみた。 |