見廻りから帰り、自分の部屋へ入ると額にじわりと汗が滲んだ。

隊服の上着を脱ぎ、スカーフも取ってシャツの袖を捲り上げる。

今日は、ここ最近の寒さが嘘のように暖かい。今朝の天気予報では、結野アナが春一番が吹くだろうと言っていた。

姿見の前に立つと、なるほど強風に煽られ続けた髪は見事にボサボサになっている。

手櫛で軽く直し、この風の中わざわざ買ってきたあるものを持って部屋を出た。


廊下はざらついて、所々に枯葉が散らばっていた。これは、後で掃除が大変そうだ。飛ばされてきた物で、襖が破れたりしないか不安になる。

局長室の前で立ち止まり、一応、開ける前に声をかける。


『佐々木さーん。居ますかー?』

返事が帰ってこない。出掛けているのだろうか。


『入りますよー。……うわっ』


襖を開け、部屋の中を覗くと、佐々木さんが仰向けに寝転がっていた。

いつも以上に半開きの目が、ぼーっと虚空を見つめている。


『居るなら返事して下さいよ!びっくりするじゃないですか』

「……ああ、すいません。見廻り、お疲れ様です」

『どうしたんですか、一体……』


ふと、佐々木さんの側にティッシュの固まりがこんもりと積もっているのに気がついた。

これは……。


『佐々木さん……。何で私に言ってくれなかったんですか!』

「はい?」

『言ってくれれば、私が喜んでお手伝いするのに』

「あの、何の話ですか?」

『佐々木さんがそんなに欲求不満だなんて、私知りませんでした!』

「え、ちょ……」


起き上がろうとする佐々木さんの上に馬乗りになり、ベストを脱いでシャツのボタンに手をかけた。


『佐々木さんのために、私が一肌脱ぎます!……優しくしてくださいね?』

「いい加減にしなさい。いったい何を勘違いしているんですか」

『え、だってティッシュがこんなにたくさん……』

「ただの花粉症ですよ。鼻水が止まらないんです」

『……なんだ』

「まったく、どうしてすぐにそういう発想になるんですか」

『……それはそうと、そんな佐々木さんのために薬局で花粉のお薬を買ってきたんですよ。はい』

「そうでしたか。それはありがとうございます。……ん?」


差し出した紙袋の中身を見た佐々木さんの表情が曇った。

……あ、やっべ。出すの忘れてた。


「コレは、いつ、どんなときに使用するために買ってきたんですか?」

『えっと……。佐々木さんが万が一にでもその気になった時の為にです!』

「……」

『佐々木さんの子なら何人でも産んでも構わないけど、今はまだ働いていたいし……。だから、ね?あれ、佐々木さん?』

「…………よ」

『へ?』

「明日、足腰が立たなくなっても知りませんよ」

『え、ちょ……。まじでか』


そして、ぐるりと視界が反転したのでした。



春一番+花粉=×××





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注:途中からずっと夢主は佐々木さんに馬乗りのまま。

久々な更新がお下品な話でごめんなさい。

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