※佐々木さん視点。一応だけど現代設定。 白い湯気でけむる風呂場に、控え目な水音が響いている。 シャワーから出る心地よい温度のお湯が、撫でるように体を滑り落ちていく。 白い泡で体を包んでいた高価なボディソープは、洗い流してもなお、ほのかに甘い香りを残した。 『異三郎、はやく』 先に湯船につかっていたなまえが、急かすように言う。 数分前までは、上機嫌にヘタクソな鼻唄を歌っていたが、のぼせてきてしまったようだ。湯船のふちに乗り出した体は幾分か赤くなっている。 「少し、水を足したらどうですか」 『異三郎は、熱い方が好きでしょ?』 「まあ、そうですが……」 蛇口をひねり、シャワーを止める。水音が止むと、なまえの僅かに荒い息遣いが鮮明に聞こえた。 ゆっくりと湯船に入ると、小さな波が広がり、いくらかお湯が溢れ出た。 『……さすがに狭いね』 「二人で入るサイズではありませんからね。……こうしましょうか」 なまえを後ろ向きにして抱き上げ、のばした両足の上に乗せると、少々スペースに余裕できた。 なまえの首筋に顔をうずめると、自分と同じ甘いボディソープの香りがした。 なまえが、くすぐったそうに身をよじる。 『ん……。いさぶろー』 振り向いたなまえのピンク色に染まった頬が、妙に色っぽい。 このまま唇を重ねようかと思ったが、ぷかぷかと水面を泳ぐ黄色いアヒルに、そんな気分を奪われてしまった。 『のぼせた……。もう出るね』 そう言って腰をあげたなまえは、ふやけてシワシワになった両手で私の顔を包み込むと、触れるだけのキスをした。 「……っ!」 ――バタンと風呂場のドアが閉まる音を聞くまで、完全に思考がフリーズしていた。 「……れ、冷蔵庫に、フルーツ牛乳が入ってますよ」 洗面所からのくぐもった返事を聞きながら、体が異常に火照っていることに気がつく。 青い印のついた蛇口を、思いきり捻る。 間抜けなアヒルと、ぴたりと目があった。 BATHROOM ------------- 不意打ちには弱い佐々木さん。 一緒にお風呂だけど、えろ要素は無し。日常のひとコマ的なお話。 JUDY&MARYのBATHROOMを聞いてたら、お風呂の話が書きたくなったんです。 |