05


『ッ…華恋……』

「ふふっ。どうしたのかなぁ〜?ほっぺが真っ赤だけど」

ピンク色の番傘をくるくると回し、さも愉快そうに言う華恋。

「銀ちゃんに、会いに行ったんでしょ?ダメだよ〜。人の旦那奪っちゃあ」

『ッ!それはアンタがっ ……』

「華恋!見つかったんですかィ」

この声は……。

『沖田さん…?』

「総悟くん!うん…。だから、早く…」

沖田さんが現れた途端、少し怯えたように話し出した華恋。

“見つかった”って、私の事…?

「名前…。おめぇまだ懲りて無いんですかィ」

華恋を自分の後ろに回し、私を睨む沖田さん。

『……何の事ですか?』

「とぼけるんじゃねぇ!お前が華恋の部屋にペンキぶちまけたんだろィ!」

『は…?』

ああ、またか…。

よく見れば、沖田さんの後ろにいる華恋の口元は弧を描いている。

懲りてないのは華恋の方でしょう。

土方さんにボコボコにされたすぐ後にそんな事出来るわけないじゃない。

「とにかく、屯所に戻ってもらうぜ」

そう言うと、沖田さんはすごい力で私の手首を掴んで歩き出した。

『っ……』

沖田さんの爪が肌に食い込んでうっすらと血が滲む。


「あたしを信じる人は沢山いるけど、あんたを信じる人は、もう誰も居ないのよ?」


耳元で私だけに聞こえる声で華恋が囁いた。


雨は未だ降りやまず、空を闇に染めながら、全ての光を溶かし呑み込んでいく―…。


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