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「う・・・」


全身に痛みを感じて起き上がる。


あちこち擦りむいてはいるが、大きな怪我はなさそうだ。



辺りを見回すが一面の雪景色で他には何もない。

痛む身体を起こして二人の姿を探すがここには人っ子一人として見当たらない。




「ジェイク!シェリー!」


私の声は山にこだまするだけで返事は帰って来ない。



「・・・どうしよう」

こんな山奥で一人きりになってしまったことに立ち尽くしてしまう。
そもそも二人は無事なのだろうか?



「あ!無線機!」


ハンドガンと一緒にシェリーから借りた無線機の存在を思い出す。
私が無線機を取り出すのと同時にそれは鳴った。



慌てて通話ボタンを押す。


「はい!」



『ナマエ!よかった!無事だったのね!』


「シェリー!」


変わらない様子のシェリーの声に一先ず落ち着きを取り戻す。


『怪我はしてない?』


「ひとまず大丈夫。シェリーは?」


『私もジェイクも・・・まあ今の所は無事よ。安心して!』


「よかった・・・」



一先ず二人とも無事らしい。
無線機の向こうで『貸せ』と言う声がしたかと思うと通話がジェイクと変わる。

後ろでシェリーが怒ったような声が聞こえる。


本当に無事なようで安心した。



『おいナマエ。そこから何か目印になりそうなものはないか?』


「目印・・・」


少し歩きながらそれらしいものを探す。



「あ!大きい鉄塔が少し遠くの方に見えるよ!あとは・・・」



少し見晴らしの良い丘の上まで上ると、森の影に隠されたように佇む小さい山小屋が見つかる。



「山小屋がある!
でも周りは高いフェンスに覆われていて、入り口には鍵が着いてて入れない。」


『その鉄塔ならこっちからも見える。割と近くにいるみたいだな。

そのあたりに鍵は落ちていそうか?』



辺りを探してみるが鍵らしきものは全く見当たらない。


「駄目。ここら辺には見当たらない。」



『わかった。俺達はそっちに向かいながら鍵を探してみる。
お前はそこから一歩も動くな。近くで隠れていろ。いいな?』




珍しく優しく諫めるように話すジェイクに「わかった。」と素直に言うことを聞く。


『ナマエ!無事でね!』


「うん。シェリーも。」



そう言い無線の通信は切れる。
二人の声が聞こえないことに不安は感じるが仕方ない。
いざという時のために電源を無駄にはできない。





まだ夕日があるおかげかそれ程辺りは暗くない。
しかし陽が落ちるのも時間の問題だ。


辺りが見えるうちに待機できる場所を見つけなければ。



私は小屋の横に備え付けられているダストボックスに目を付ける。
あまり清潔ではないがこの際仕方がない。そう思いその中に身をひそめる。




(寒い・・・)


じっとしていると漸くその寒さを感じるようになってくる。
なんせ今の自分の格好は膝上のスカートだ。いくらブレザーを着ているからと言っても雪山の寒さを防げる訳じゃない。


そう言えばジェイクもシェリーもちゃんとジャケットを着ていたな、と今更ながら思う。


まあ突然家から連れてこられてしまった私には、どうしようもない話なのだが。



気が付くと辺りは暗闇に覆われていた。

それに伴い寒さも増してくる。



外からは何かの呻き声も聞こえてくるような気がする。
いつこの場所がばれるか気が気でない。



自分の膝に顔を埋める。




心細い__



(ジェイク・・・シェリー・・・早く来て)



シェリーの優しい微笑み、ジェイクの温かい手。
二人が無事であることを願いながら必死に耐える。


その時私が入っているダストボックスの箱が開かれる。


「・・・ジェイク・・?」



その瞬間胸倉を掴まれて外に引きずり出される。



「きゃあ!!」


(ジェイクじゃない!)




ライトの光を顔に当てられ相手の顔を見ることはできないが、彼がこんなに乱暴なことをするはずがない。




やはりそれはジェイクではなく顔がボロボロに崩れたジュアヴォであった。



(マズイ!!)

必死にハンドガンに手を伸ばすが、それは地面に落ちてしまっており取ることは叶わなかった。


「う・・っぐ・・・」



胸倉を絞められているおかげで息ができない。
足で敵の腹を蹴るが不安定な態勢のため力が入らない。



意識が遠くなる

力が入らず手と足をダラリと投げ出す。


(もう・・・だめ・・・)



「ナマエ!!」

ジェイクの声が聞こえたかと思うとその圧迫感から解放される。


「おい!生きてるか!?」



「ジェイク!開いたわ!ナマエを連れて中へ!」




急激に酸素を吸い込みせき込む私をジェイクは横抱きにしたかと思うと、シェリーが開けた小屋の入り口へ入る。


丈夫な鉄製のフェンスに遮られて、ジュアヴォたちはそれ以上中には入ってこなかった。

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