2-1

無事に到着した合衆国のヘリに乗り、私たちはBSAAの一行と別れた。

シェリーは電話でどこかに連絡をとっているようだ。
話の内容からしてジェイクとの契約についてだろう。


話がついたのかシェリーは電話を切る。

「5000万ドルで応じるそうよ」


「話が早くて助かるぜ」


国から5000万支払われると聞いたジェイクは手を叩いて喜んでいる。

少しの間であったが一緒に死線を何度も乗り越えてきて、少しは仲良くなれたのではないかと思っていたがそういう訳ではないようだ。


彼の目的はあくまでも金。そのために私たちと一緒にいるに過ぎない。




(・・・まあ私にはもう関係のない話だけど)



二人は今後のことについて話し合っているようだが、私はそこに行くことはできない。


何故なら彼らと私とでは歩む人生が全く違うから。




近くにいるはずなのに、その会話からは大きな距離を感じた。



私はとりあえずのところアメリカへ移送されることとなった。
当面の生活は国が補助を出してくれるらしい。
アメリカでは今回のようなケースで難民が出た際の救護システムが、あのラクーン事件以降密かに作られているとのことだ。



父・母の行方はわからない。
現地のエージェントの話だとそこはすでに建物は倒壊し、荒れ果てていたとのことだ。
シェリーは今後も私の両親の捜索に力を尽くしてくれると約束してくれた。

私はシェリーのことを信じ、両親の帰りを待ち続けようと思う。



それが今の私にできる唯一のこと。



その時突然機体が大きく揺れた。
あまりの衝撃に座席から放り出そうになるがシェリーが支えてくれる。


「なに!?」


「しつこい野郎だな!」



機体の外に張り付いているのはあのジェイクを追っかけていたBOWだ。



「生きていたのね…!」


戦闘態勢に入る両者。再び機体が大きく揺れる。
どうやらなり振り構わずこの機体ごと落とそうとしているらしい。


BOWは機体の扉を次々に破壊していく。その度に冷たい風が入りこんでくる。




「この機体はもう持たない!隣に移動するわよ!」



隣を見るといつの間にか別の飛行機が並走している。
しかし隣とは言っても割と距離はある。ここは空の上、落ちたら命はない。



(ここに居ても飛行機と一緒に落ちるだけ。)


「ナマエ!」



先に飛び移っていたシェリーが手を出してくれている。



私は助走を付けて思い切りジャンプし何とか無事に着地する。


だがジェイクが最後こちらにジャンプしようとした瞬間、元いた飛行機が炎を上げて爆発してしまう。



その爆風に煽られたジェイクは、助走の瞬間バランスを崩したが何とかこちらの飛行機の縁に掴まる。




「ジェイク!!」


化け物も別の飛行機に飛び移り、そこからジェイクに向かいサブマシンガンを乱射する。


私とシェリーは何とかジェイクの腕を掴み、引き上げた。





「最悪の展開だぜ」

こんな時でも軽口を叩く余裕のあるジェイクに、呆れを通り越し尊敬の念さえ覚えてしまう。


こちらの飛行機の後部は大きく空いており、そこに備え付けられているマシンガンを使用できるようになっている。


二人がマシンガンを打っていると、別のヘリからミサイルが発射されたことに気が付く。



「ミサイルが!」


大声で二人に伝えるとマシンガンで二人は見事打ち落とした。



「ありがとう、ナマエ!」


「ったく、大金を手に入れるのも簡単じゃねえな。」



一度は退けたかと思ったが、化け物は捨て身を覚悟でヘリごとこちらに突っ込んでくる。


「ああっ!」


その衝撃でシェリーとジェイクは機体の前の方まで吹っ飛ばされてしまう。


私自身も斜めにかしがる機体を前に立つこともままならない。
その間にも化け物は私たちに向かって機体を昇ってくる。



「酸素ボンベ・・・!」


化け物の傍に酸素ボンベが飛んできたことに気が付く。




このままの状態でいてもあいつ相手に勝機はないだろう。ならばいっそのこと・・・!



ジェイクとシェリーは体勢を治す暇がなく照準を合わせている時間はない。





(私が当てる・・・!)

「ナマエ!?」



シェリーの声を無視し、ハンドガンを構え酸素ボンベを狙う。



「大丈夫!」


そう言いボンベへと弾を打ち込む。
その瞬間ボンベは爆発し、化け物は外へと吹き飛ばされた。




だが同時に私たちもその衝撃で投げ出される。

縁に掴まろうとするが私の手は宙を掻き届かなかった。



__おちる



死を覚悟した瞬間、

肩に激痛を感じるが誰かに手を掴まれる。



「ジェイク!」


この大きい手は紛れもなくジェイクだ。

落ちなかったことに安堵するが、彼もシェリーもまた縁に掴まった状態であり危険であることには変わりない。


「パラシュート!」



シェリーの一言にジェイクは自らの手を離し、パラシュートを掴む。
必然的にジェイクによって支えられていた私も宙に放り出されることになる。

胃が浮き上がる感覚に声にならない悲鳴を上げる。

しかし私の身体は空中でジェイクの手によって片手で抱えられた。
同時にシェリーの手を掴み自らの腰に誘導したかと思うと、素早い手つきでパラシュートを装着し開く。





(助かった・・・!)

その安堵も束の間のことだった。
バラシュートは墜落するヘリのプロペラにより大きく穴を空けられた。



意味をなさなくなったそれは私たち三人と共に真っ逆さまに落ちていった。

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