5-4
孵化してしまったハオス__
それはまさしくカオスであり、この世の終わりを体現しているかのような姿であった。
(これが地上に出てしまえば、世界は)
例えジェイクが無事に戻った所で、これが出た時点で世界は終わる。
今倒さなければすべてが終わる。
しかしハオスの攻撃によって私たち三人とクリスさん、ピアーズさんは分断される。
「クリスっ!!」
「お前たちは先に行け!こいつは専門家の仕事だ!」
無茶だ
あんなものたった二人で倒せる訳がない。
「ピアーズさん!!ダメっ!私も戦う!!」
クリスさんたちの方へ向かおうとする私をジェイクは止める。
「駄目だ!行くぞ!」
「ジェイク!?」
ピアーズさんはニコリと私に向かい微笑む。
「心配するな。そう簡単にやられはしないさ。
__傭兵、いや、ジェイク。
ナマエを大切にしろよ」
ジェイクはその言葉に確かに頷いた。
そしてクリスをもう一度見やると今度こそその場を後にした。
「幸せになれよ ナマエ__」
無常にも閉じられた扉。もうこの扉が開くことはない。
私はジェイクに手を握られたまま涙でグチャグチャの顔を拭うこともできなかった。
「はぁ・・・はぁ・・・」
(ピアーズさん・・・・!!)
「二人で倒せる相手じゃないわっ!!」
私と同じくクリスを援護しようとしていたシェリーはジェイクに怒鳴る。
「もう戻れない」
「殺されるかもしれないのよ!!」
そうだ。二人とも殺されるかもしれない。
ジェイクは悪くない。たぶん彼は今私たちの中で一番冷静だ。
だけど・・・!!
「・・・シェリー。お前の言った通りだ。
俺は親父とは違う。
今やっと、あと少しでナマエのおかげでそれが証明できそうなんだよ!
それが証明できるまで俺は死ぬわけにはいかねぇ。
何がなんでも生き残ってやる。」
ジェイクが私の手を力強く握りしめる。その手は震えていた。
「・・・ジェイク」
ジェイクだって二人を置いてきて平気な訳がない。
優しい人だ。
私たちに余計な責任を負わせないためにあえて自分が判断して実行したのだろう。
そんなジェイクの気持ちを汲み取った私は彼の手を握り返す。
「!・・・ナマエ」
「シェリー、行こう。世界を救いに。」
涙を拭ってシェリーに真っ直ぐな目を向ける。
私たちがここで立ち止まってしまったら、
クリスさん、ピアーズさん、レオンさん、ヘレナさん そしてエイダ。
今まで私たちを助けて支えてくれた人たちすべてが死ぬ。
彼らの思いを繋ぐためにも私たちは生きて外にでなければならない
その瞳にシェリーも迷いを振り切る。
「そうね・・・・二人の言う通りよ。
__行きましょう。今度こそ世界を救いに」
海底基地を脱出するべく再び動き出す私たち。
扉の先はマグマが煮えたぎる部屋だった。
ここを越えなければ出口にはたどり着けない。
私たちがマグマの上の鉄製の足場に降り立った瞬間、今来た扉をこじ開けてウスタナクが姿を現す。
「おいおい、またかよ・・・」
右腕につけていたパーツを取り換えたのか、その先には当たったらただでは済まなそうな棘のついた鉄球が付いている。
「だめ、ここじゃ戦えない!」
なんせこの足場は相当狭い。
歩くだけでも神経を使う程だ。そんな所でこの化け物とまともに戦える訳がない。
逃げ惑う私たちの足元に、あの巨大な鉄球が直撃する。
「きゃあああ!!!」
足場は崩れ、万事休すかと思いきや落ちた先にはしっかりと地面があった。
周りはマグマだが、ここだけ地面が残っていたらしい。
本当にこれが最後の決戦だ。
「ここならやれそうだ!決着付けようぜっ!クソ野郎っ!!」
ジェイクの声と共に私たちはそれぞれ銃を構えた。
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