5-3

エレベーターを昇った先は先ほどよりも数倍大きい吹き抜けの空間。

私たちは向こうから走っていくる人影に気が付く。



いち早くそれに気が付いたシェリーが彼らに駆け寄った。


「クリス!?」


「皆無事なようで良かった。」



「やっぱり・・・クリスが私たちを助けてくれたのね」



シェリーは何となく想像がついていたようで納得したようにお礼を言っている。



「ナマエ、無事で良かったよ。」


「ピアーズさんっ!ピアーズさんも・・・」




無事でよかった、そう言おうとした瞬間後ろから肩に手を回されて引っ張られる。



「っ!ジェイク!?」



突然の行動に非難の声を上げるナマエ。
ジェイクは何も答えずただピアーズを睨みつけている。



「ちょっとジェイク!

もうっ!ナマエが他の男と話そうとするだけでこんな調子で困っているの。」


ごめんなさい、そういうシェリーにピアーズは特に気にする様子もなく答える。



「いや、いいんだ。・・・俺も少し挑発し過ぎたしな」




ピアーズの言葉にジェイクとクリス以外はキョトンとした表情を浮かべる。

クリスは「ああ、あれか」と思いだしたかのように呟くが、ジェイクのただならぬ雰囲気にそれ以上尋ねることはできなかった。




そんな雰囲気を打ち壊すように、クリスはジッとジェイクを見つめたかと思うと一言呟く。



「似ているな、親父と」




(えっ?)


クリスさんはジェイクの父親が誰だか知っている?しかも面識があったらしい。



「・・・どうやって私たちを「ちょっと待て」


ただならぬジェイクの気配を察したシェリーが咄嗟に話題を変えようとするが、ジェイクはそれに静止をかける。


「・・・知ってんのか?」


「ああ・・・・・・ 


俺が殺した」


「え・・・・・・?」



クリスさんが、ジェイクの父親 つまりアルバート・ウェスカーを殺した?



つまりジェイクにとってクリスさんは 親の仇___



次の瞬間ジェイクはクリスに向かい銃を向けていた。
ピアーズさんもそんなジェイクを威嚇するように彼に向けて銃を向けている。



「え・・・!ちょっと、ジェイク・・・っ」



「黙ってろ」



そう言って彼を止めようとする私を押しのける。



「・・・飼い犬には首輪つけとけよな」




恐らくピアーズさんに向けていった言葉であろう。
ジェイクは威嚇されているにも関わらず、相当頭に血が上っているのか銃を下ろす気配はない。



「これは俺と彼の問題だ。」



ピアーズさんをそう言って制したクリスさんはジェイクと向き合う。


クリスさんはジェイクに撃たれることも覚悟の上なのだろう。




彼のピストルの先端に自らの額を近づける。

その様子にやはりクリスさんは悪い人ではない、そう思った。




「撃ちたいなら撃て。君にはその権利がある。」


そう言うクリスをジェイクは鼻で笑ったかと思うと安全装置を下げる。


「その変わり約束してくれ。何がなんでもここから出て世界を救うと。」



その言葉にジェイクは激昂したように叫ぶ。





「テメェが俺に指図できる立場かよっ!!!」



「ジェイク・・・」




無理もない。
どんなに悪いことをした男であったのだとしても、ジェイクにとってはたった一人の父親だったのだ。

直接会ったことはなくても幼い頃母親からは父親の話をたくさん聞いてきただろう。


ジェイクにとっては家族だったのだ。

その仇が突然目の前に現れた。




混乱してもおかしくない。


「やめて!」


「銃を下ろせ!!」


シェリーもピアーズもジェイクを止めようと声を荒げる。





「・・・何故親父を殺した。

BSAAの為か?アンタ個人の為か?」



「・・・・・両方だ」


ジェイクはクリスを試している。駄目だ。彼に発砲させては。


ここでジェイクがクリスを殺せば、ピアーズは間違いなくジェイクを殺す。





何よりも、ジェイクに彼を撃たせてはならない。そう感じた。





「ジェイク!止めて」


私はクリスさんを庇うようにジェイクの前に立ちふさがる。



「どけっ!ナマエ!お前には関係ない!!」



「関係あるよっ!!」


ジェイクの手を掴み照準をクリスさんから外そうとするが、彼の力は強くピクリとも動かない。






「・・・ジェイクが自分の血に苦しめられるのを、これ以上見たくないっ!!」


ここでクリスさんを殺してしまえばきっと彼は再び、自分に流れる血を憎むだろう。




そして深く傷つくはずだ。自分は血に囚われ続ける運命なのだと。





「お願い・・・ジェイク」

私の声を、聴いて




「ジェイク、やめて」


「3秒以内に銃を下ろせっ!撃つぞ!」


「銃を下ろして!」




「うおおおおおおおおおおおおお!!!!」




ドンッと至近距離で銃声が聞こえ、思わず目を閉じる。



ジェイク___!クリスさんを撃ってしまったのか





恐る恐る振り返るとクリスさんの頬には銃弾の掠ったような痕が残っていた。


ジェイクが、意識的に反らしたのか

「・・・・今はこんなことしてる場合じゃない。

俺も、あんたも」




(・・・よかった)





ジェイクが自分の血を乗り越えた

 
そんな気がした。






その時、ドンッと物凄い地響きが起こる。


「何・・・!?」


警告音が鳴るモニターには恐ろしい言葉がかかれていた。






『ハオス解放 感染率100パーセント』


あの頭上で今にも孵化しようとしているあれ。



今まで見てきたどのクリーチャーよりも大きい。






あれが地上に出たら__

恐らくこのモニター通りの未来が待っている。




「脱出するぞっ!」


ピアーズさんの言葉に私たちは一斉に走り出す。




終焉の時が訪れようとしていた

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