5-2

『現在ハオス覚醒準備段階のため 電力供給遮断状態 

エレベーターは予備バッテリーとリンクすることで起動できます』



そう簡単には外に出してくれないらしい。

現在のバッテリーは25パーセント。
あと75パーセントのバッテリーは別の場所にあると考えるのが普通だろう。





「ナマエはここで待っていろ」


ジェイクの言葉に目を見開く。また私は足手まといだとでも言うのだろうか。



「誤解すんな。このエレベーターは脱出するために絶対に必要になる。

さっきの化け物がまた出て、もしこれが破壊されちまったらそれこそ俺たちはここで終わりだ。」




「・・・そうね。ナマエにはここを守ってもらって、私とジェイクで手分けして残りのバッテリーを入れてくる。

今はそれが一番安全な方法かもしれないわね。」



ジェイクとシェリーの言葉に納得がいったのかナマエはコクンと頷く。


「・・・わかった。頑張るね。」


「・・・これを貸しておく。」



そう言って手渡したのは先ほども使ったショットガン。



「なるべく使わないのが一番だが・・・
いつさっきの化け物が現れるか分からねぇ

。お守り代わりに持っておけ。」



「・・・ありがとう。
ジェイク、シェリー、無事に帰ってきてね。」




「ああ、お前もな。」



「行ってくるわね。すぐに戻るわ。」




そう言って二人は中央の吹き抜けになっている上下する機械にジャンプして乗り込む。

それは上下左右に動きいろいろな部屋の前で止まり、一見規則性のない動きをしているように見えるが、よく見ればある一定の動きしかしていない。
下には溶鋼がボコボコと音を立ててここまで熱気を運んでくる。



(・・・二人とも、どうか無事で)


ジェイクから借りたショットガンをギュッと抱きしめ二人の帰りを願った。


「ジェイク。よくナマエを一人で残したわね。」


シェリーは疑問に思っていた。

いくらナマエを信頼していると言っても彼女は訓練を積んできた私たちとは違うただの一般人。

大切な彼女をジェイクがなんの考えもなしに一人あの場に残してくるとは到底思えなかった。



「・・・エレベーターを守れって言ったのは本音半分、建前半分、だな。

別にアイツを足手まといとかそういう理由で残してきた訳じゃない。
ただ、あそこにはもう敵はでないと思ったからな。」



「え?どういうこと?」



「俺が隅々まで確認したからな。間違いない。」


「そう言うことね。」



100パーセント安全とは言い切れないが、間違いなくあの場所は他に比べれば安全だろう。

それにエレベーターを死守しなければならないのは変わりない。
だったらナマエに任せた方が都合がいいという訳だ。


それに彼女ももう昔とは違う。
先ほども動揺するシェリーを見事クリーチャーから守った。


だったら私たちは私たちにしかできないことを素早くやるだけだ。
一分一秒でも早く、彼女の元へ戻るために。



「ホントにジェイクって顔の割に紳士的よね。」



「何言ってんだ。俺はいつでも紳士だろ。」


『電力供給100パーセント』


(シェリー・・・!ジェイクっ!)


二人が電力を上げてくれたことによりエレベーターの明かりがつき使える状態になる。



あとは二人がここに帰ってくるのを待つだけだ。


(本当に待つだけってのは堪えるなぁ)




何度二人の後を追おうと足を進めようとしたか分からない。


ジェイクがエレベーターを守れと言った意味もよくわかっている。
そして彼がこの場所に敵がいないかどうか再三確認していたことも。


別に邪魔もの扱いしたとか、足手まといだと思っているのだとか今更いちいち癇癪を起こしたりはしない。




だってそれが今の私の実力だから。


あの気持ちの悪いクリーチャーが捕まったらマズイ類のものだということは、私も対峙してみて嫌と言う程理解している。


百戦錬磨の二人でもアレを相手にしながらどこにあるかも分からないバッテリーを探し、さらには私まで連れて歩くと言うのはなかなか無理があるだろう。

だったら私は皆の集合地点にいた方が都合がいい。




それにいくらジェイクが何度も確認していったといっても何時どこから敵は現れるか分からない。
唯一の脱出方法であるエレベーターを失う訳にはいかない。





「絶対に負けない・・・」

二人が帰ってくるまでこのエレベーターは死守する。





その時だった。

突然中央吹き抜けにある上下を繰り返していた機械が物凄いスピードで暴走し始める。




「な、なに!?」


思わず吹き抜けの方へ駆け寄り上を見上げる。

斜め上方向の部屋の入り口にはシェリーとジェイクの姿があるが、このスピードで回る足場に渡るのはとても無理だろう。


しかしこの部屋に戻るにはこの足場を伝って戻るしかない。


(何とかしてこれを止めなければ・・・!)



そう思っていた矢先、突然足場はガツンと鈍い音を立てて動きを止める。


どうやらどちらかがクレーンを操作してそれをストッパーにしたようだ。


だが無理やり動きを止められた機械はギイイイと鈍い音を立てて今にも壊れそうになっている。



足場が壊れてしまえば再びこの溶鋼を渡る手段はない。
そう判断したのであろう二人は、揺れる足場を伝ってこちらに向かってくる。


だが足場は大きく揺れて二人は下の足場まで振り落とされる。



「ジェイクっ!シェリーっ!!」


次に落ちたら今度こそ煮えたぎるマグマの中へ真っ逆さまだ。
しかも先ほど二人が乗っていた上にある足場が今の衝撃でゆっくりと下へ迫ってきていた。




このまま足場が落ちてきたら・・・


「急いでっ!足場が上から・・・っ!」



挟まれたら一環の終わりだ。
上の足場のせいでもはや立つスペースがほとんどない二人は匍匐前進でこちらに向かって進んでくる。





しかし悪いことは続くものだ。

あの不気味なクリーチャーが二人の後を追い、襲い掛かろうとしている。




私は咄嗟に背中に背負ったスナイパーライフルを構える。




クリーチャーに照準を合わせてそれに向かい___放つ



見事額に当たったそれは、マグマの中へと沈んでいった。




「飛ぶぞっ!」


ジャンプしてきた二人の手を私は掴む。


二人がこちらの足場へ戻ってきた所で下の足場は完全に潰される。



もしもほんの少しでも遅れていたらと考えるとゾッとした。



「・・・よかった、二人とも無事で・・・・・」


ホッとしたせいか涙で視界が歪む。

「本当に、今日はナマエに助けられてばっかりね。」



シェリーがその指先で私の涙を拭う。


「ああ、お前がいなかったらあの化け物にやられていたか、アレに潰されてたな。

今日のMVPは間違いなくお前だぜ、ナマエ。」



ジェイクも大きい手で私の頭をワシャワシャとかき乱す。

優しい二人に再び涙が溢れてくる。




「私、二人に会えて本当によかった__」


その言葉にジェイクもシェリーも目を見開く。



本当は皆分かっていた。

ここから無事に出ることができたら、三人の旅も終わりを告げることを



「・・・・ばーか!まだ気が早いんだよ。

そういうことは無事に脱出してから思う存分言えっ!!」


「そうよ。今は余計なことは考えない。

とにかくここから出て世界を救うの!あなたが私に言ったことよ」





そう言ってエレベーターに乗り込む二人。





「「ナマエ!行くぞ/わよ!!」」


そして私たちは最後の舞台への幕を開けた__

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