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「感動の再会といきたいところだけど、その余裕はないわ。
ナマエ、この先に私の上司のシモンズと言う人物と落ち合う予定になっているクーチェンがある。
でもシモンズはこのテロの引き金になった人物かもしれないの。」



シェリーの上司がこのテロを引き起こした?

彼女は合衆国から極秘で派遣されたエージェントだ。
つまりそのシモンズという人物もそれ相応の地位を持った人物なのだろう。


そんな人物が起こしたテロが今回の結果であるならば、世界規模の被害であることにも納得がいく。



「・・・シェリー。大丈夫?」



心配なのは彼女の精神状況だ。

上司と言うからには少なくとも信頼していた人物であっただろう。



だがシェリーは動揺した様子は見せずジェイクとナマエに言い放つ。







「ジェイク。レオンの言ったことが本当だったら・・・・

____ナマエを連れて二人で逃げて」




「なに言ってるの!?シェリー!そんなこと「例え何が起きてもっ!」


珍しく声を荒げるシェリーに私は言葉を飲み込む。



「あなた達だけは死んではいけない。そうしなければ世界は終わるわ。」



「・・・・シェリー」



「・・・・・約束して」



真っ直ぐに私たちを見つめるシェリー。



「・・・・わかった」

「ジェイクっ!?」


本気なの?

シェリーを置いて逃げる。そんなこと、



できる訳がない


ジェイクの表情はそれを物語っていた。私も決意したように頷く。



「ありがとう。二人とも。」



シェリーは扉の先へと進む。






絶対に見捨てたりなんかしない。

例えシェリーの願いとて聞くわけにはいかなかった。





扉を開けた先に居たのは銃を構えた二人の男女と、その二人を見降ろす一人の男。

見下ろす男は周りに多くのジュアヴォを引き連れている。




「待ってくださいっ!」



シェリーは二人の男女を庇うように前へ躍り出る。
シェリーに続くように私も彼女の横へ走る。




「おお、バーキン君。いますぐ彼らを逮捕してくれたまえ。」



男はシェリーに向かい命令する。
あの年配の男がシェリーの上司というシモンズだろう。


「あなたがこのテロに関係しているというのは本当ですか!?」


声を荒げるシェリーにシモンズは面倒くさそうに答える。



「余計なことまで吹き込まれたか!全てはアメリカのため・・・」


「大統領を殺したことがアメリカのためだというのかっ!?」



金髪の整った顔をした男がシモンズに向かって叫ぶ。
シェリーの先ほどの言動からして、この男が彼女の恩人の一人であるレオンという人物だろう。


「・・・・やれ」


シモンズは周りのジュアヴォに命令したかと思うと私たちのいる場所には銃弾の嵐が降り注ぐ。




「君もこっちへ!!」


「えっ!?」



私は金髪の男に手を引かれて物陰へと逃げ込む。



「シェリー!?」

シェリーはやはり上司の裏切りが信じられないのかその場にとどまっており一歩も動けない。

私はシェリーの元へ走ろうと物陰から出ようとする。



「待てっ!危険だ!!」


金髪の男に腕を引かれて前に進めない。


「だってシェリーが!!」


それでも彼女の元へ行こうとする私を止めようと、男は後ろから私の所を羽交い絞めにする。

「は、離してっ!」


「すまないが、それはできない。」



動くことができないシェリーを抱きかかえてジェイクが私たちと同じ物影へとダイブする。


「ジェイクっ!シェリー・・・よかった・・・・」


シェリーの無事を確認した私はホッと息を吐く。



ジェイクは私の方を見やると怒ったような表情で近づいてくる。


「おい、英雄さんよ。今すぐソイツを離してもらおうか。」



ジェイクは低い声でそう言ったかと思うと、レオンが彼女を離す前に彼女を自分の方へ引っ張る。


「わぁっ!!」


そしてそのままレオンから彼女を隠すように自分の胸の中へ抱きしめた。


突然のジェイクの行動に動きを止めていたレオンだが、合点がいったのかその口元に笑みを浮かべている。



「・・・なるほど。彼女がお前の・・・・。


な?縁があれば会えるだろ?」



「・・・余計なお世話だ」



「レオン!何とかしてこの場を切り抜けないと・・・」


レオンと一緒にいたグラマラスな女性が彼に声をかける。



「おっと、そうだったな。

あの扉まで走れるか?」




レオンが指す扉へ行くにはどうしても物影がない場所を走らなけらばならない。



「全員ぶっ殺しったっていいんだぜ。」


物騒なことを言うジェイクに思わず眉を顰める。




「お前はシェリーと彼女を守ってやれ。お前にしかできない。



__もう彼女を泣かせるなよ」




「待ってレオン。これを・・・」


そう言いシェリーはIDカードをレオンに渡す。
あれにはジェイクに関するすべての情報が、世界を救うための全てが詰まっているはずだ。


彼はそれを託す程信頼できる人物だということだろう。



「この中にCウイルスから世界を救うための鍵がすべて入っている。

シモンズが求める情報の全てよ。」



「・・・わかった。

ところで君・・・ナマエって言ったかな?」



突然話を振られてジェイクの腕の中でビクリと反応する。



「は、はいっ」




「生きて帰れたら俺と飲みにでも行こうぜ」


「へ??」

「おいてめぇ・・・なにふざけたこと」



「さぁ走れっ!!」




飛び出したレオンとヘレナの後ろを通るように私たちは扉まで走り抜ける。



レオン・・・不思議な人物だ。

勇敢な人物かと思えば最後の一言ですべてを台無しにしていった。





「ナマエ、レオンが言ったことは気にしないで。
信頼できる人なんだけど、彼はちょっと女癖がね・・・」



まぁジェイクと一緒に居れば問題ないわ!と明るく言うシェリー。恐らく空元気だろう。


無理もない。信頼していた上司に裏切られてしまったのだから。


落ち込むシェリーを何とか元気づける方法はないものかと思考を働かせる。



「しぇ・・・・んんっ!?」

私の声は何者かの手をよって口を塞がれ言葉にならなかった。


額に押し付けられる冷たい鉄の感覚にヒヤリと汗をかく。


「ナマエっ!!」


ジェイクが振り返りナマエの元へ走ろうとするが、ジュアヴォは額に押し付けたハンドガンの安全装置をカチリとはずす。



その音にビクリとその身を硬直させるナマエ。


恐怖に目を見開いた彼女の表情にジェイクは手も足も出せなくなる。



動くことができないジェイクとシェリーをジュアヴォたちは同じように羽交い絞めにしどこかへ連れ去ろうとする。


嫌だ もう二人と離れ離れになるのは

「じぇい・・・っ!!!」



しかし抵抗も空しく、私はピストルの柄で首を殴られて意識を失った___

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