4-3
「もう逃げるのは止めだ!シェリー!
あのヘリぶっつぶすぞっ!!」
「つぶすってどうやって」
「それを今から考えるんだよっ!」
シェリーは呆れたように首を横に振ると、
別の建物へ移動し狙撃しやすい高所へと向かっていった。
その上ではBSAAの人たちが戦っているようだが苦戦しているようだ。
屋上では物凄い轟音と爆発音が止まることなく鳴り響いている。
(ピアーズさん・・・)
心配そうに上を見上げるナマエにジェイクは苦々しい顔をしたかと思うと彼女の手を取る。
「おいっ!お前は俺から離れんな!
__どうせ一人じゃ何もできないんだからな!」
ジェイクの言葉に目を見開く。
確かに私は二人の足ばかり引っ張っていて何もできない。
役立たずだ。
普段だったら流せていたかもしれない。
だが、今この瞬間、言われたことによって私の頭は急速に冷めていく。
ジェイクが掴んだ手を振り払い彼から距離を取る。
「おい・・・ナマエ?」
離れた手を一瞬見て、怪訝そうな顔をするジェイク。
「・・・ジェイクの言う通りだよ。
私は一人じゃ何もできない。今まで生きてこられたのだって二人のおかげ。
二人のことは大好きだよ。
でもそれが二人にとっての重荷になっているのだとしたら・・・
私にはそこまでして守ってもらう価値なんてない。」
ジェイクの瞳を見て自分の気持ちを話す。
見つめ返してくる真っ青な空のような綺麗な瞳。
もう一度真っ青な空が見たい、そう願っても見えるのはどす黒い空ばかり。
「お前・・・何を言って」
「ジェイク。私を抱いたことは忘れて。
責任を感じる必要なんてない。あなたは私を助けてくれただけなんだから。」
また一歩、ジリリと後ずさる。
「・・・今言ったことは謝る。
俺たちは何度もお前に助けられてきた。それは紛れもない事実だ。
だから、そっちへ行くな。戻ってこい。」
「違うよっ!!」
突然声を荒げたナマエにジェイクはピクリと彼女に向けて伸ばした手を止める。
「ジェイク、私はジェイクのことが好き。これはシェリーに言う好きとは違う意味だよ。
あなたは優しいから、きっと私を抱いたことを心のどこかで申し訳なく思っているんだよね・・・
だから私のことが好きだなんて言ってくれた。
でもジェイクは私のことを好きだと勘違いしているだけ。
その証拠に私は今まで一度だってあなたに頼られたことはない。」
確かに自分は今まで彼女に頼ったことはなかった。
だがそれは決して足手まといだからとかそう言う訳ではなく彼女を守りたい一心だったのだ。
ナマエがそのことについてそれほどまでに思い詰めていたことに気が付かなかった。
涙を流しながら言うナマエを今すぐ抱きしめたい。
しかし、あと一歩 足が出ない。
「誤解だ。俺は確かにお前のことを」
「ジェイクはさ、本当はシェリーのことが好きなんじゃないの?
ずっと思ってた。
可愛くて、強くて、優しい。
シェリーならジェイクの隣に立つのにふさわしいと思う。」
こいつは、何を言っているんだ?
確かにシェリーは大切な仲間だ。だがそれ以上の感情はない。
俺が本当に好きなのは・・・
その間にも彼女は足場のない方へジリジリと下がっていく。
「ナマエ。話を聞いてくれ。」
「どっちにしてももうジェイクたちとは一緒に居られない。
こんな汚い感情を持っていたなんて知られたくなかった。
シェリーに・・・申し訳ないよ。」
その瞬間ナマエの身体はグラリと後ろに傾く。
「バイバイ ジェイク__」
ジェイクはその手を掴もうと手を伸ばすがその手は空しく空を切るだけだった。
「ナマエ―――――――!!!!」
なにがおきた?
ナマエが、死んだ?
いや、そんなはずはない。
俺はまた、
「守れなかった、のか?」
昔の記憶がフラッシュバックして頭が痛くなる。
恐る恐る彼女が落ちた下をのぞき込む。
ナマエが死ぬはずがない。
だが彼女が落ちたであろう場所には何もなかった。
一体どこに?
ジェイクは無我夢中で下の階まで降りて辺りを探すが、どこにも彼女の姿はない。
「どこに行ったんだよ・・・ナマエ__!!」
ジェイクがナマエを探し回っている間にヘリはBSAAが撃墜させたようだ。
そこへシェリーが戻ってくる。
「ジェイク!今までどこに・・・ナマエは?」
力なくうなだれるジェイクにシェリーは詰め寄る。
「ねぇ・・・ナマエはどこなの!?」
「・・・消えた」
シェリーの真っすぐな瞳から逃れるようにジェイクは目を伏せる。
「消えたって・・・。何があったの!?」
ジェイクの胸倉を掴むシェリー。
だが掴んだジェイクの身体は僅かながら震えていることに気が付く。
そんな彼の様子にこれ以上詰め寄ることができず、胸倉を離すシェリー。
「・・・ごめん。混乱しちゃって。」
「いや・・・俺も、何が何だか・・・。
少し、休ませてくれ・・・。そしたら話すからよ・・・」
ジェイクは壁に寄りかかり座り込んだかと思うと膝に顔を埋めてしまった。
今までに見ない弱弱しいその様子に、シェリーにはこれ以上尋ねることはできなかった。
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