4-2
バイクでの追っかけっこが終わり、一息つけるかと思いきや
シェリーは何かに気がついたかのようにバッと上空を見る。
「ジェイク!」
先ほどまでのヘリが再び私たちを照らしだすように上空に現れる。
「くそったれ!」
二人は私を間に挟むようにしてお互い背中合わせになる。
四方から現れるジュアヴォの群れ。
流石の二人でもこれだけの数は厳しいかもしれない。
なにか危機を脱出できるものはないか辺りを見回すと、
見覚えのある軍服をきた集団が建物の上に現れる。
「BSAA!!」
「レッドフィールドとそのお仲間たちも来ているみたいだな。」
その中には半年前にお世話になったクリスさんとピアーズさんの姿もある。
(二人とも無事だったんだ!)
軍隊なんていつ死んでもおかしくない職業。
お世話になった二人が無事であったことに喜びを隠せない。
「クリスたちが助けてくれるみたい」
シェリーも同じ気持ちだったのか嬉しそうな声を上げる。
「頼んだ覚えはないがな。」
「ブツブツ言わないの!せっかくクリスが・・・」
「ああ分かってるよ。クリスクリスってうるせえな!」
突然シェリーの言葉に怒りだすジェイク。
これではまるで彼がクリスに対し嫉妬しているようではないか。
(もしかして私は、)
とんでもない勘違いをしていたのかもしれない。
ジェイクは確かに私のことを好きだと言ってくれた。
だがそれが、彼の優しさ故のものだったら?
彼は私を助けるために抱いた。
その責任感が彼の心を縛ってしまっているのだとしたら?
___本当はシェリーのことが好きなのではないか?
「ナマエ!!」
ジェイクの声にハッとする私。
振り返るとそこには斧を構えたジュアヴォが
(避けられない__)
向こうから走ってくるジェイクがやけにスローモーションに見える。
死ぬときっていうのはこういう感じなのか。
死を覚悟して目を閉じた瞬間、
目の前にいたジュアヴォが横に吹き飛ぶ。
「え・・・」
そのジュアヴォは見事に額を撃ち抜かれていた。
ジェイクではない。彼には銃を構えている暇はなかった。
では一体だれが?
私は上の方へ目を向ける。
「ピアーズさん?」
こちらに向かって銃を構えながら手を挙げるピアーズ。
彼があの距離からこの敵を撃ちぬいてくれたのだろう。
ジェイクもそちらの方へ目を向けている。
「ナマエ!ボーっとするなっ!!
俺が援護してやるからあの時みたいに思い切りやれっ!!」
「・・・ピアーズさん」
彼の激励に思わず涙ぐむ。
そうだ。私はこんな所で死ぬわけにはいかない。
まだ父の本当の気持ちもしらないし、母の生死も確認できていない。
何よりも私自身この気持ちに整理のつかないまま死ねる訳がない。
今はとにかくこの場を乗り切らなければ。
そうしなければジェイクの本当の気持ちを知ることだってできない。
振り切るように私はハンドガンを構えシェリーの元へと走った。
その様子を後ろから気に入らないように見つめるジェイク。
「あの時ってなんの話だよ。」
聞こえるはずもない呟きをもらすジェイク。
ピアーズはそんな様子の彼に向かい大声で話しかける。
「おい!傭兵!
俺がナマエを援護するからにはアイツには怪我一つさせねぇ!
だからお前はそこで指咥えて見てるんだなっ!!」
ピアーズはジェイクに対し挑発ともとれる台詞を吐く。
それを聞いたジェイクは米神に青筋をピキピキと立てる。
「んだと・・・!?」
離れた場所にも関わらずバチバチと火花を散らす二人。
しばらくにらみ合っていた二人だがジェイクはフッと鼻で笑ったかと思うとピアーズに向かい叫ぶ。
「アイツを守るのは俺だ!指咥えて見てんのはお前の方だ!」
ジェイクはそう言うと二人の元へ走っていってしまった。
「ピアーズ?珍しいな。お前が進んで突っかかるなんて。」
クリスが知るピアーズという男は、明るくて敵を作らない、だが仕事となれば冷静沈着で物静かな男、そんなイメージだった。
余程あのジェイクという男と合わないのか。
「いえ。・・・若いなぁって思って。
それとちょっとした親心、みたいなもんですかね。」
そのピアーズの穏やかな表情に、少なくとも悪い感情は含まれていないと思ったクリスはそれ以上は何も言わないことにした。
「・・・若いって。俺からしたらお前も十分若いんだが。」
「・・・すみません。」
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