4-1
銃弾の嵐を潜り抜けながら中国の街を疾走する私たち。
辺りは暗いと言うのにまるでそれが見えているかのように車を避けながら、
猛スピードでバイクを走らせるジェイクにこちらが恐ろしくなり目も開けていられない。
「ぎゃああああ!!死ぬ!死ぬから!ジェイクー!!」
「うるせえ黙ってろっ!舌噛むぞ!」
頼りない竹で出来た足場の上をバイクで走っては飛び、走っては飛び、いい加減死んでもおかしくないと思う。
いつの間にか建物の上を走っていたり、地面に降りていたりもう訳が分からない。
ヘリの追撃を逃れようと竹でできた足場の上を猛スピードでバイクは走る。
しかし何かにその銃弾が当たったのか爆発が起こる。
爆発はなんとか避けたが爆風に煽られるバイク。
「ぅう・・・!」
物凄い熱風に目も開けていられない。
ジェイクの腰に回した手をさらに強く掴むと、それをジェイクは片手で支えてくれる。
バイクの操縦もしているのに何故これ程までに余裕があるのだろう。
その時私は後ろに乗っていたシェリーの体温が感じられないことに気が付く。
「ジェイクっ!シェリーがいない!!」
恐らく先ほどの爆風で吹き飛ばされてしまったのか、彼女は上空を飛ぶヘリの足に掴まっている状態だった。
「ジェイクっ!ナマエっ!」
「くそっ!しまった・・・!」
ジェイクはアクセルを蒸かしたかと思うと猛スピードでヘリの下へと向かう。
「もう少しふんばれ!俺が受け止めてやる!」
シェリーは必死に掴まっているが段々とずり落ちてきているのが分かる。
「シェリーー!!もうちょっとだから!!頑張って!!」
ヘリの真下までバイクが来たところで再び彼女に声をかける。
「シェリー!いいよ!受け止める!」
そう言うと彼女はすでに限界だったのか、滑り落ちるように手を離す。
(私の力で受け止められるか?
いいや!絶対に受け止める!)
シェリーの落ちる位置でジェイクは、彼女をバイクの上に乗せるように急停止する。
私はシェリーが落ちるときの衝撃を少しでも和らげようと、彼女のお腹の下に手を添える。
ジェイクも私と同じことを考えていたようで、二人で彼女を抱えるようにバイクに乗せる。
無事にシェリーがバイクに戻った所で再び発進する。
「シェリー、大丈夫!?怪我してない!?」
「ええ。大丈夫よ ありがとう二人とも!」
「私は何も・・・助けたのはジェイクだよ」
私の小さな呟きは周りの騒音にかき消されて届くことはなかった。
一難去ってまた一難。
ヘリから打たれた銃弾がタンクローリーに直撃し、大きく横を向いてこちらへ向かってくる。
「タンクローリーがっ!」
避けるスペースがない。
ギュっとジェイクの服を握る。
しかし彼はタンクローリーの下をバイクごと体制を低くして見事に潜り抜けた。
道の向こう側に行った所でタンクローリーからは、先ほどヘリから撃たれた弾の衝撃のせいか燃料が漏れている。
そしてその調度真上には私たちをさんざん追いかけまわしてくれたヘリが。
「燃料タンクをっ!!」
大声で二人に知らせる。
この距離で私にあの小さい的に命中させる自信は全くない。
「任せて!!」
シェリーは見事燃料タンクに弾を命中させた。
それと同時にタンクローリーは大爆発を起こす。
それは読み通り頭上のヘリを巻き込んで墜落させた。
しかしまだバイクに乗ったジュアヴォたちは追いかけてきている。
振り切るために再びバイクを急発進させるジェイク。
「シェリー、ナイスっ!」
「ナマエが咄嗟に教えてくれたおかげよ!」
「そんな・・・撃ったのはシェリーだよ。」
「もうっ!もっと自分に自信を持ちなさい!」
「おい!口を閉じろ!飛ぶぞっ!!」
大ジャンプした先は高速道路。
辺りには人が乗り捨てていったのであろう車が道のいたるところに置いてある。
あれに当たればタダでは済まないだろう。
道が広くなったことで今まで以上のスピードを出すジェイク。
しかしジェイクはそんな車を難なくスイスイとよけていく。
再び私たちの前に現れたヘリは車をたくさん積んだ積載車を撃つ。
何が何でも私たちをこの町から出したくないらしい。
積んであった車は後ろのハッチを開けられたことによって次々とこちらへ落ちてくる。
ギリギリの隙間を縫ってバイクを走らせるジェイク。
「飛ぶぜ!手ェ離すんじゃねえぞ!」
ヘリのプロペラの上を超えて高速道路から再び大ジャンプする。
本当にこの人は咄嗟の時の判断力が普通の人間ではない。
最もそれは彼の高い運動能力を持ってして成立するものなのだが。
流石のジェイクも見えない先への着地は難しかったらしく、地面に着いた瞬間バイクごと転倒する。
バイクはそのまま電柱に突っ込んでしまい爆発する。
(さっきまで新品だったバイクが・・・)
一瞬で廃車である。さすがはジェイク。
「いってぇ・・・平気か、二人とも」
「ええ。なんとかね・・・」
シェリーの手を引き立ち上がらせるジェイク。
「ナマエ?」
いつまでも起き上がらないナマエに不振がり再び声をかけるジェイク。
「おいっ!大丈夫・・・」
まさかどこか怪我でもしたのではないかと思い彼女を抱き起すジェイク。
「・・・もうジェイクの運転するバイクには乗らない」
余程先ほどまでの追っかけっこが怖かったのか、
頬を膨らませて不満げな顔をしている彼女を見て二人はホッと息をつく。
「驚かせんなっ!」
その柔らかい頬をつかみムニーと横に伸ばすジェイク。
「いひゃいいひゃい!はなひぇ!ひゃげっ!」
最後のハゲの部分だけはしっかりと聞き取ったのか、ジェイクはその頬を更に伸ばす。
「いっひゃーい!」
「俺はハゲじゃねえ!こういう髪型なんだよ!」
そんな様子の二人を見てシェリーはため息をついた。
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