3-5

施設を脱出するために動き出した私たち。


ジェイクの思わぬ特技、超絶技巧を目の当たりにして爆笑するなどのアクシデントはあったが、
なんとか敵の目を掻い潜り施設のコンピュータールームのような場所へ到着する。



「やった・・・!データは全部残ってるわ!」



そこにはジェイクの写真が写っており、彼に関するありとあらゆる情報が記録されているようだった。


難しい文字の羅列に意味はわからないが興味深々なナマエに対し、シェリーはクスリと微笑み手を動かしながら説明する。



「この中にはね、世界を救う大事な情報が詰まっているの。
ジェイクの血液・体液・細胞・遺伝子・・・ありとあらゆる情報よ。

敵が血眼になって欲しがっている、ね。」



「体液・・・」


それはもしや、とも思ったが口には出さないでおこう。
ジェイクにバカにされるのは目に見えている。


「ラッキーだぞ。使える。上司に連絡を取れ。」



ジェイクはシェリーに携帯を手渡す。
シェリーが連絡をとっている間は扉の方を警戒したように見ている。



私の持つハンドガンよりも数段大きいマグナムを構えるジェイク。

その姿は銃を扱うことに慣れているのを感じさせる。


先ほどまでの動揺はそこには感じられない。


(振り切ったのだろうか?)

いや、それはないだろう。
一朝一夕で解決できる問題ではない。




ジェイクは一体なぜ傭兵をやっているのだろう。常に死と隣り合わせの生活。
やはり先ほどもポロリと言っていた、母親のことが関係しているのだろうか。


そこに至るまでには何か並々ならぬ苦労があったに違いない。

しかし彼はそれを語らない。ならば聞くのは筋ではないだろう。

そう思い彼がいつか話してくれるその時まで待とうと思う。



ジィッとジェイクを見ていると彼も視線を感じたのかこちらに目をやる。


「何見てんだ。さらに惚れたか?」


いつものようにフンっと鼻で笑うジェイク。




「うん・・・。かっこよくて見惚れてた。」


「んなっ・・・!?」



そう言い返すとジェイクの方が茹蛸みたいに赤くなってしまう。
最近彼の扱い方がようやく分かってきた。



「アホか」「馬鹿か」と照れながら言うジェイクの頭をシェリーは軽く叩いたことで、連絡がいつの間にか終わっていたことを知る。



「二人とも。
イチャつくのはいいけど時と場合を考えましょう。」



その顔には有無を言わせぬ威圧感があった。




シェリーとその上司の会話は終了したらしい。
ここから脱出すべく私たちは部屋から出る。


「さっさと行くぜ。どうせこいつら話しにならねぇしな。」



このコンピュータールームに入る前にあらかたの敵は片付けていたので、私は正面玄関から外に出るべくそちらへ近づく。



「もうこんな所に居たくない。早く行こう・・・」



そう言いジェイクとシェリーの手を握る。




「そうね、さっさとおさらばしましょう。」


(なんだ・・・この音)


ジェイクにはこの玄関の外から何かの機械が近づいてくる音が聞こえる気がした。
そしてそれは少しずつ大きくなる。


「!!戻れっ!!」



ジェイクの声にいち早く反応したシェリーは咄嗟に後ろに下がり、ナマエの手を後ろへ引く。




「わぁっ!!」


その瞬間 轟音と共に正面玄関は戦車によって破壊される。



戦車から放たれる激しい攻撃に一行は成すすべもなく退却を余儀なくされる。




「おいおい!マジかよ!!」



さすがのジェイクもこれには驚いたらしく、苦笑いを浮かべている。



「別の道を探すわよ!」


シェリーはそのままナマエの手を引き壁に向かって走り出す。


ジェイクの手を踏み台にし、シェリーは見事な運動神経で2階に位置する場所まで昇ってしまった。



「ナマエっ!」



シェリーが先程上った位置から私に向かい手を伸ばしている。


「と、届かないよっ」


「んなの分かってるっつのっ!!」


「えっ?きゃあああ!!」




ジェイクは私の身体を自分の肩にいとも簡単に乗せたかた思うと、2階のシェリーへと近づけてくれた。



咄嗟にシェリーの手を掴む私。
シェリーはその細い身体のどこに力があるのか、私のことを引き上げてくれた。




「お前がチビなのは知ってるっつの。」


ジェイクはそう言ったかと思うと砲弾の雨を避けながら、私たちとは逆方向に走っていってしまった。


「ジェイクっ!!」



思わず手を伸ばそうと身を乗り出す私。

それをシェリーに制止される。





「そんなに身を乗り出しては危ないわ!」


「だってシェリー!ジェイクがまだ・・・!」



そう言う私にシェリーはジェイクの方を指さす。
私もそちらの方を見ると、彼は崩れ落ちた階段を上手く昇り、突き出た鉄パイプを伝い見事に2階へと上ってきた。





「ね?心配しなくても大丈夫。
ジェイクはナマエを置いていったりは絶対にしないわ。」


そう微笑むと私を立たせて彼の元へ走る。



(なんだ・・・)


私なんかよりもシェリーの方がよっぽどジェイクのことを分かっている




「おい!ボーっとするな!さっさとここからズラかるぞっ!」


今度はジェイクに手を引かれて、追いかけてくる戦車から逃げる。




シェリーはジェイクの隣に立つだけの実力も強さも優しさも兼ね備えている。


じゃあ私は?




二人に守られて、足を引っ張ってばかりだ。


二人とも本当に優しい。




だってこんな私を守ってくれている。好きだって言ってくれている。


それなのに私は、シェリーに嫉妬してる。


__こんなにも汚い

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