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「ええっ!?
じゃあ、ナマエもCウイルスの抗体を持っていたってこと!?」
私たちは一先ず着替えをしてから、半年間の離れていた分の情報共有をすることにした。
「そうみたい。ジェイクと違って後天的なものらしいけど。」
そうだ。シェリーはあの時気を失っていたからほとんど何も知らなかったんだ。
「・・・おい、無理すんな」
心配そうにこちらの様子を伺うジェイクに微笑みかける。
「大丈夫。シェリーには話しておきたいの。」
だって仲間だもの。
そう言うナマエにジェイクはそれ以上は何も言わなかった。
あの時起きたことを逐一漏らさず伝える。
シェリーは自分のことのように話を聞いてくれた。
「・・・辛かったわね」
「ううん。私その時にね、シェリーと私は似ているなって思ったの。
だから私にはシェリーの気持ち、すごく良くわかる。
だから嬉しい気持ちもあるんだ。」
「ナマエ・・・」
シェリーは思わず涙ぐむが、必死に堪えているようだった。
話の間、ジェイクは何とも所帯なさげな、落ち着かないようにソワソワとしている。
「どうしたの、ジェイク?」
あまりに落ち着かないその様子に思わずシェリーは声をかける。
「あの、よ・・・俺も言わなきゃいけないことがあるんだよ」
彼にしては珍しい言いにくそうな様子に、ナマエもシェリーも思わず向き直る。
「黙ってようかとも思ったが、やっぱりこのままじゃお前たちと一緒に行くことはできない。
だから話す。」
彼がここまで言うということは余程の内容なのだろう。
思わずゴクリと喉を鳴らす。
「ナマエ、お前は覚えていないのかもしれないが、
半年前ここに来てすぐの頃、俺たちは一度だけ会っているんだ。」
「えっ・・・」
知らなかった。と言うか全然覚えていない。
ここに来てからは来る日も来る日も実験、実験でジェイクと会った覚えなんてない。
「なんでナマエはそのことを覚えていないの?」
シェリーは疑問に思いジェイクに詰め寄る。
彼の言い方からして彼はその理由を知っているように感じだからだ。
ジェイクは言いにくそうに言葉を詰まらせるがやがて決意したように話しだす。
「俺が抱いたからだ」
「は・・・」
ジェイクの言葉の意味が分からないとでも言うように二人はポカンとする。
シェリーの方が先我に返ったのか焦ったように尋ねる。
「それは・・・せ、セックスって意味で言ってるの・・?」
言いにくそうにおずおずと尋ねるシェリー。
「そうだ。」
真っ直ぐに自分を見つめてくるジェイクの瞳から逃れようと目を逸らす。
ジェイクが、私を抱いた?何故?
というか私はどうしてそのことを覚えていないの?
「Cウイルスに対する抗体を持つ者同士が交配したらどうなるかって実験だったらしい。
俺の所に来たお前は媚薬を打たれてその時にはもう前後不覚だった。
お前が俺を求めてきたから俺は抱いた。」
「それだけだ」そう言いきったジェイクに対しシェリーは彼の頬を平手で打った。
彼は特に怒ることもなく、打たれたまま俯く。
「・・・だから抱いたって言うの!?奴らに言われるがまま!」
「・・・待ってシェリー、落ち着いて。」
「だって、だってナマエはジェイクのことが・・・!
こんなのってひどすぎるわ・・・」
自分のために涙を流してくれるシェリー。
だが私はジェイクの話を聞いても不思議と落ち着いていた。
「シェリー考えてもみてよ。ジェイクって顔の割にとても優しい人でしょ?
絶対に奴らに命令されるがまま私を抱くような人じゃないと思う。きっと何か他に理由があった。
だからジェイク。全部話して。
あなたが乱暴するような人じゃないって事は私達が一番よく知っているよ。」
そう言うとジェイクは眉間に手を当てる。
彼が考え込むときによくする仕草だ。
ナマエの強い視線に根負けしたのかジェイクは観念したように話しだす。
「・・・薬を打たれて前後不覚になっているお前を見て、何とかして助けてやりたいと思った。
結構きわどい服してやがったからな、理性を保つのに必死だったさ。
でもそんな状態のお前を抱くのは卑怯だと思って耐えてたんだよ。
そしたらお前が・・・」
ジェイクは言葉を切りなんとも言いにくそうにしている。
「ジェイク。言って。」
「・・・俺が好きだからいいって。
俺に助けてほしいって。まぁ結局俺もただの男だったって訳さ。
___好きな奴にそんなこと言われて我慢できるわけねぇだろ。」
ジェイクは「言っちまった・・・」と言い手で顔を覆ってうなだれている。
そうか、ジェイクも私と同じ気持ちだった。
「・・・私もジェイクが好き。だからいいよ。」
そう言いジェイクの頬を両手で包み込む。
真っ青な綺麗な瞳が突き刺さる。
「これでおあいこね。」
チュッと彼の薄い唇に口づける。
その瞬間ジェイクは座っていた椅子から飛び下がり、私と距離をとってしまう。
「おおおお、おま、シェリーが居る前でなにすんだ!」
「自分はもっとすごいことしたくせに。」
そう言うと彼は耳まで赤くした。
「ジェイク・・・ごめん。ぶっちゃって・・・」
シェリーがその可愛らしい顔を歪ませながらジェイクに謝る。
「いや、構わねぇよ。
俺がお前だったらきっと俺のことボコボコにしてたし。」
言っている意味が分からない。
ジェイクもようやくいつもの調子に戻ってきたようだ。
「とりあえず、ジェイクは無事にここから出て世界を救ったらきちんと責任をとりなさい。
いいわねっ!」
ビシッとジェイクを指さすシェリー。
「・・・そのつもりだよ。」
「え・・・?」
その言葉にシェリーは満足そうに「よしっ!」と頷いた。
「そうと決まればさっさと世界を救いに行くわよ!」
「あっ!待ってよ、シェリー!」
「やれやれ、スーパーガールには叶わないぜ。」
三者三様の反応をして私たちは半年間を過ごした施設を後にした。
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