2-5

再び化け物に追いかけまわされる私たち。


次々と硬い扉を開けて、先へ、先へと進む。


「まさか、カードキーのあんな小さい音に反応するなんてな。」


「やっぱりほとんど目が見えない代わりに、耳が発達しているのかも」



だから姿を隠した私たちのことを発見できなかったのだろう。


その扉の先にあったのは、やけにゴツイ機械。
先端についているドリルのようなものから判断するに、恐らく採掘用の機械なのだろう。


ジェイクとシェリーはお互い顔を見合わせ頷いたかと思うとその機械に乗り込む。

私も彼らに続き座席へと座る。



あまりに息ぴったりなその姿にとても頼もしい気持ちになる。


息を合わせたコンビネーションでなんとか化け物を倒したジェイクとシェリー。


「勝てたわね。」


「超ギリギリだったけどな。」


そのあっさりとした様子にやはり彼らは私の住む世界とは違う住人なのだと感じる。








終わった__


今度こそ出口を目指すだけだ。


「やっと出口か。」


朝日が入りこむ出口に思わず目を細める。




長い、長い夜だった。



「あそこの街で落ち合うことになっているわ。
この先を下ればピックアップしてもらえるはず。」


「俺が5000万ドルを手に入れられるまでもうすぐってことだな」



その言葉に私の心は急速に冷めていくのを感じる。



(そうだ ジェイクはこういう人だった)

元々金の為にやむを得なく私たちと一緒にいるようなものなのだ。

だが、彼は幾度となく私を助けてくれた。
私を助けてもそれこそ金にならないだろう。それなのに、だ。





僅かな違和感を感じながら歩を進めようとした瞬間、



私は何者かに後ろから羽交い絞めにされて身動きできなくなる。




「ジェイク!!シェリー!!」


「「ナマエ!!!」」



二人は私の方へ向かおうとするがジュアヴォの激しい銃撃により、そこから動くことができない。



その時シェリーの背後からゆっくりと死んだはずのあの化け物が近づく。


「シェリー!!!危ない!!」





私の叫びにシェリーは振り返るが間に合わず、彼女は身体を大きく飛ばされ気を失う。




「シェリー!!!!!離して!離せ!!」




ジタバタと暴れるが二人がかりに腕を拘束され身動き一つとれない。



ジェイクはシェリーに気を取られたのか一瞬反応が遅れ、化け物に背中を足で踏みつけられ身動きがとれなくなる。



「うっ!!」


「ジェイク!!!」



(どうしよう どうしたら二人を助けられる!?)





その時東洋っぽい顔立ちをした美しい女性が、多くのジュアヴォを引き連れ現れる。



(あの人、どこかで見たような・・・?)





「…誰かと思えば栄養剤配ってた姉ちゃんじゃねぇか。
あの栄養剤、効く奴には良く効くみたいだな。
俺には効かなかったがな。」




ジェイクの軽口を無視し、美しい女性は続ける。


「あなたが、ウェスカー・ジュニア?」


「ウェスカー・・?はっ!誰だそれ!」




「アルバート・ウェスカー。世界を征服しようとした素敵な大馬鹿者。



___あなたのパパよ」





その衝撃の事実に私も耳を疑う。

ジェイクが、アンブレラ社社長のウェスカーの息子。
ジェイク自身も知らなかったようで驚愕の表情をしている。


「あなたはその呪われた血を受け継ぐ者。」



女の言葉にジェイクは分かりやすいほどに動揺する。


(このままじゃ・・・!)



「ジェイク!耳を貸しちゃ駄目!!」



するとジェイクは目が覚めたようにナマエの方を見る。



「・・・・ナマエ・・」



女性はナマエの方に目をやりさらに笑みを深くする。



「あら・・・あなたたちはもしかして・・・・。

フフ!これは面白いことになったわね。


__連れてきなさい。」




女性がそう言うとナマエはジュアヴォにより無理やり歩かされる。



「いやっ!離して!

____ジェイク!!!」



ジェイクは必死にBOWの足の下から抜け出ようとするが、その化け物じみた力に抵抗する術はない。


「やめろ!!ナマエには手を出すな!!
そいつはただの一般人だ!」




ジェイクが必死に女に向かい叫ぶ。



「あら?この子がただの一般人ですって?

フフフフフ!
面白いことを言うのね!」



突然訳の分からないことを言いだす女にナマエとジェイクは眉を顰める。



「ジェイク・ミューラー。何故その子が誘拐されたのか、あなたは知らないのね。」


可笑しそうに女は笑う。





「・・・生憎俺は日雇いの傭兵なものでね」




「あらそう。ならいいわ。教えてあげる。


その子はね、元アンブレラ社研究室責任者の娘。
亡きバーキン夫妻の後を継いだミョウジ氏を父親に持つの。」





「え・・・?」

私の父親が、シェリーの両親の後を継いでいた?


「その子にはね、あなたと同じCウイルスに対する抗体があるのよ。」


衝撃の事実に私の頭は着いていけていない。
私がジェイクと同じ、世界を救う力を持っている?


「い、意味がわからない・・・。だって誰もそんなこと言っていなかった。」


驚愕する二人を無視して女は続ける。


「生まれたときからあなたの周りにはウイルスしかなかった。」


「え・・・」



「あなたの父親は優秀な科学者だった。
だからこそ未知なるものへの好奇心を抑えることができなかったのでしょう。

ウィリアム・バーキン博士のように。」


その言葉にジェイクは目を見開き静かに言葉を発する。


「・・・やめろ。それ以上話すな」


何かを察した様子のジェイクに女は再び笑みを深くし、言葉を続ける。



「あなたは生まれたときから『Tウイルス』『Gウイルス』その他にもさまざまなウイルスを極少量ずつワクチンと共に投与されていたの。
それらが化学反応を起こして、今回新たな抗体があなたの中にあることが分かった。




それがCウイルスへの抗体。」



女の言っている言葉の意味がわからない。


それが本当なら 私は 私はお父さんに___


そんな彼女の様子を見て女はさらに笑みを深める。


「あなたの父親はね、研究の為なら実の娘をも利用する下衆だったってことよ。」


「止めろって言ってんだろ!!!」


ナマエには聞かせたくなかった。茫然とする彼女を無視してさらに女は続け


「彼、とても喜んでいたわ。だって18年の月日を経てようやく完成__」


女の言葉は途中で途切れる。

ジェイクを見やれば何故か彼の手には銃が握られていた。


「・・・それ以上汚ねぇ口を開けば殺すぞ」


その殺気は間違いなくアルバート・ウェスカー、その人の血を継いでいるという何よりの証拠だった。


「・・・あなた、やっぱりアルバート・ウェスカーの息子ね。

その殺気、彼にそっくり。」



彼女の周りにいたジュアヴォがジェイクの持つハンドガンを奪い取る。



力なくうなだれるナマエ。

無理もない、信じていたはずの父親に生まれた時から裏切られていたのだから。




力ない彼女を再びジュアヴォは連行する。


「ナマエ!!

俺は、お前を絶対に助けに行く!


だから大人しく待っていろ!いいな!!」



そう言ったと同時にジェイクの意識は暗闇へと落ちた。







「寂しがらなくても大丈夫。

だってあなたたちはすぐに会えるもの」



そう言うと女はその美しい顔を酷く歪ませた。

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