2-4

洞窟の出口は雪で埋められてしまい、もはやこの坑道を抜けるしか道はない。


「大丈夫?」


「心配いらねぇ。俺の身体は戦車並みに丈夫なんだよ。」


「頼もしいわね。」



「っと、それよりもナマエ。体調はどうだ?」




ジェイクは巻き付けてあった腰紐を外し、彼女を一旦地面に下ろす。



「・・・さっきよりはだいぶ良くなった。シェリーのくれた解熱剤が効いてきたみたい。

ごめんなさい。二人とも、迷惑かけて・・・。」



「気にしないで。それよりもナマエ。熱は一時的に薬で下げているにすぎないわ。効果が切れれば再び熱は出る。

くれぐれも無理はしないで。」



「大丈夫。・・・ジェイクも色々ありがとう。
この服も、寒いよね・・・ごめんなさい。」



熱のせいで弱っているのかいつもの強気な彼女はどこにもいなかった。


自分のジャケットは彼女にはやはり大きすぎるようで、前までしっかりと閉めてはいても覗けてしまう谷間に目のやり場に困る。


「・・・気にすんなって。
一応、お前にも色々と助けられたからな。おあいこだ。」


ポンッと彼女の頭に手を乗せる。


「そう言うこと。さあ、行くわよ。」


「・・・・ありがとう、二人とも」




洞窟を進んでいくと一面に氷が張った場所に出る。

その中心に、私たちをさんざん追いかけまわしてくれた化け物がいた。



身動き一つせず、何かを待っているようでもある。


(あの化け物は一体何を待っているの?)



しつこく私たちを追いかけてくるあいつ。きっと何か目的があるに違いない。



「気づかれないように静かに進むぞ。」


そう言ったジェイクに続き私たちは進もうとする。



その瞬間


化け物は突然こちらに向かって走り出したのだ。




「入って!」



シェリーに促され近くにあったダストボックスに身を潜める私たち。


目の前まで来たそいつだが、私たちの姿が見えないと知るやいなやすぐに元の場所へ戻ってしまった。



「なんで俺たちのことがわかった?」


怪訝そうに小声でジェイクが話す。




「・・・思ったんだけど、あれが原因じゃないかな?」




私が指さす方向をジェイクとシェリーは見る。

「たくさん飛んでいる、あのコウモリみたいなの。
あれがアイツの目の変わりになっているんじゃないかな?」



よくよく考えてみたらあいつにはほとんど目がない。
もしかしたらとてもすぐれた聴覚も持っているのかもしれない。






「そうと決まれば話は早いな。」


ジェイクはそう言ったかと思うとダストボックスを静かに飛び出し、コウモリにその長い足で回し蹴りを食らわせ沈黙させた。





「早く来い」

手招きし先に進んでしまうジェイク。





「もう、いつも突然なんだから!行くわよ、ナマエ」


私もシェリーに続き静かにそこを出た。




例の化け物に一回追いかけられるというトラブルもあったが死ぬ気で走りなんとか事なきを得た。


「はぁ・・・はぁ・・・死ぬ・・・・」



「んだよ。だらしねぇ奴だな。」



「こっちは病み上がりなんですけど!」




そんな私たちを無視しシェリーは先に進む。



「・・・これ」



どうやら先に進むためにはカードキーが必要らしい。
シェリーが指さす方向には一つの死体が。その中に煌めくカードキーがある。



しかし一つ問題が。

「・・・あいつが近くに居すぎるな。」




どうしたものかと頭を悩ませる一行。



「ねえ、今持っている武器って何があるの?」



「はぁ?なんでまた。」


と言いつつもジェイクは己が持っている武器を次々に腰やらポケットから出す。




よくもまあこれだけポケットに入れていたものだ。


「シェリー。これ・・・」


「あ!リモコン式爆弾・・・使えるかもしれないわ。」


「なるほどな。ナマエ、お前病み上がりとは思えない位冴えまくりじゃねえか。」



「もっと褒めていいのよ」



フフンと鼻高々になる私。少し元気が戻ってきたかもしれない。





シェリーがカードキーを取るために物陰に待機する。
それを確認した所で私とジェイクが反対方向に設置した爆弾を起動させる。
音に反応した奴がそこに行く。
その間にシェリーがカードキーを入手。

そういう手はずで行く。


「ねぇジェイク。ボタン私に押させて!」


始めてみる武器に興味津々なナマエ。


「はぁ?別にいいけど・・・変わってんな、お前。」


んっとジェイクからボタンを受け取る。

シェリーが物陰に待機したのを確認した瞬間ボタンを押した。



爆発音に反応した化け物がそちらに向かって走っていくのを私とジェイクは物陰から確認する。




シェリーは無事にカードキーをゲットしたようだ。


これで後は外に出るだけ。





「・・・なぁ。」


「なに?」



やけに神妙な様子のジェイクに疑問符を浮かべる。





「ここから出て、お前を無事に送り届けたらさ・・・」



するとジェイクはハッとしたように自分の口元を抑える。







「どうしたの?」


「いや、何でもない。

・・・シェリーが戻ってくるぞ。」






シェリーが戻ってくるのを見るとナマエは彼女に駆け寄り、無事にカードキーを入手できたことを喜びあっている。


___俺は今 何を言おうとした?



「落ち着け。今ならまだ間に合う。」


忘れるな。誓っただろう。

二度と人間など信じないと。



自分の気持ちをごまかして生きることは得意だ。

気が付かなかったフリをして時が過ぎるのを待とう。

それが賢明だ





俺にとっても、ナマエにとっても__

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