7.焦る気持ち
休もうと思って偶然入った部屋。そこで思いもよらないものが手に入る。

「ラッキーだぞ…!ここの構内の地図だ」

広げてみたそれにはここの施設に関することが事細かに書かれている地図であった。

「出口までどれくらいなんですか?」


ピアーズの持つ地図をのぞき込んでみるが思ったよりも細かい図面に目がチカチカする。

「うーん…。
どうやらここはさっきのショッピングモールの地下に位置するみたいだ。
調度地下5階位かな。」


地下5階と聞いてヒヤリとする。
その高さから落下してよく無事だったものだ。だがふと疑問に思い口に出す。


「えっ。でもあのショッピングモールに地下なんてありませんでしたよ?
なんでこんな場所が…」


「それは分からない。業務員の為の施設だったのか、別の何かだったのか。
どちらにしてもこのエレベーターが動いていればモールに出ることができるし、地上に出れば無線も通じるから仲間を呼ぶことができる。

…まあクリス隊長のことだがら今頃血眼になって俺たちを探しているはずだよ。」


その様を思い浮かべてクスリと笑うピアーズ。
その笑顔がいたずらに成功した子供のような表情で、思わずドキンとする。


「そのクリスさんって人のこと、信頼しているんですね。」


「…まあそうなるのかな。」


そう言うと照れくさそうに頭を掻くピアーズ。
始めてみる彼の表情にこんな年相応の顔もするのだと親近感が湧く。


しかし突如としてピアーズは鋭い目をして辺りを見回す。
そして次の瞬間に私は肩へ衝撃を感じていた。

先ほど居た場所から後ろへ飛ばされ尻餅をつく。
どうやら私はピアーズさんに肩を押されて後ろへ吹っ飛んだらしい。
ピアーズさんも先ほど居た場所から飛びのいて少し後ろへと下がっている。


__一体なぜ 

考える間もなく視界にナニカを捉える。
ピアーズさんと私の間、調度先ほどまで私たちのいた位置に得体の知れない化け物がいたのだ。


「な…に……」


「リッカー…!?」


ピアーズさんがリッカーと呼んだ化け物は四つん這いで歩行しており何とも特徴的なのはその露出した脳と長い舌。
その醜い姿に思わず後ずさる。
だが後ずさった先に椅子の足があった。ぶつかったそれはガタンと大きな音を立てる。

その瞬間リッカーはナマエに狙いを定めたかのように早足で近づいてくる。


「や、やだ…!ピアーズさん…!!」

(マズイ…!)


もはや一刻の猶予もないと判断したピアーズはショットガンを構えリッカーの脳髄に狙いを定める。


「ナマエ!目を閉じろ!!」


その瞬間__ドカンとけたたましい二発の銃声が鳴り響く。


銃弾は見事リッカーの脳へと当たり血とも脳髄とも言えないものが辺りに飛び散る。
ピアーズはリッカーの活動が停止したのを確認してナマエの元へ駆け寄る。


「ナマエ!だいじょ…!?」

彼女は活動を停止したリッカーだったものを目を見開いて見ていた。
よくよく見れば彼女の服や顔にもその体液はベットリと付着してしまっている。
次の瞬間ナマエは耐え切れなかったように前かがみになり床に嘔吐する。



「う…え…気持ちわる……ぴあーず、さ」

「…大丈夫。大丈夫だから。」


正直リッカーの見た目はその手のB.O.Wに慣れた自分であっても気味が悪いと思うものだ。
しかもそれは恐らく彼女の目の前で飛び散った。
気持ちが悪くなってしまうのも分からなくはない。

彼女が嗚咽を上げている間少しでも楽になるようにと背中をさすっていたピアーズ。
次第に吐くものがなくなったのか彼女の荒い息が静寂の部屋に響く。


「あり、がと…ピアーズさん…だいぶ楽になりました。」


「…これで口をゆすいできな。」


そう言ってペットボトルに入った水を差し出す。
彼女はそれを受け取ると少しピアーズから離れた所へ口をゆすぎに行く。


(急がなければ)


消え入りそうな彼女の小さい背中が限界を訴えているのが分かる。
一刻も早く外に出なければ大変なことになるかもしれない。
急く気持ちを抑えながらピアーズは彼女が戻ってくるまでじっと見守っていた。


「落ち着いた?」

戻ってきた彼女は何とも罰が悪そうな顔をしていた。

「すみません…。迷惑ばっかりかけて。」


俯き加減にシュンとうなだれるナマエ。
そんな彼女を元気づけるように小さい頭をワシャワシャと撫でる。


「わ!何するんですか!ピアーズさん!」


髪の毛をグシャグシャにかき乱されたことに抗議の声を上げるナマエ。
頬をプゥと膨らませるその様子に思わず笑みがこぼれる。


「ごめんごめん。調度いい位置にあるからさ。」


クスクスと笑いながらその様子を見ていたピアーズ。
膨らむ柔らかそうな頬を小突きたい思いに駆られたが、流石に怒られるだろうと抑えることにした。


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bkm