1.日常から非日常への転落
「んー!いっぱい買い物したっ♪」

やっぱり少し遠くてもこのショッピングモールに来てよかった。
私の地元のモールとは比べ物にならないくらいの品数だ。



(あとはコーヒーでも飲んで帰ろうかな♪)

すっかりいい気分のナマエ。


だが地獄の影はすぐそこまで迫ってきていたのだ__

「逃げろぉ!!」

「ゾンビだぁあああ!」


突然の怒号と人々の悲鳴の声。穏やかだった日常はあっという間に崩れ去る。
走り去る人の波を避けれずその場に尻餅をつく。



「え…なに、あれ…」

見つめる先には人が人の上に乗っている図。
しかしよくよく見ればソレはグチャグチャと奇怪な音を立てている。
そう、まるで人が人を喰っているような…

振り返ったソレは明らかに生きている人間とは違っていた。

「ひっ!」


血走った眼、それにその顔はその場に倒れ伏す人の血液だろうか、真っ赤に染まっていた。
新しいターゲットを見つけたソレは古い餌を捨ててこちらへふらふらと向かってくる。



震える足に鞭打ち立ち上がろうとするが、それは自分の足ではないかのように言うことを聞かない。


「や、やだ…!どうして…!?」


必死になって立ち上がるが一歩進む前に再び尻餅をついてしまう。


「だ、だれか…!」


助けを求めようと辺りを見回すがそこにすでに人はいなかった。
後ろへズリズリと下がるがゾンビはそれを追いかける。




万事休すかと思ったその時、


何かの破裂音と共にそのゾンビは横へ吹き飛び動かなくなった。



「大丈夫か!?」


恐怖で動くことができない私の肩を担いでその男の人は立ち上がる。


「こちらピアーズ。生存者を発見。これから合流します。」


『了解した』


無線で何事か話した彼は私を肩に担いだままゆっくりと歩きだす。


「突然すまない。だけどここは危険だ。
すぐに落ち着ける場所まで移動するからそれまで辛抱して。」


軍服を着て大きな銃を背負った男はそう言うと、私の背とひざ下に手を差し入れ意図もたやすく抱き上げる。


「ひゃあっ!」


突然の浮遊感に思わず彼の首に掴まる。
そして彼は私を抱いたままモールの出口に向かって走り出す。


突然のゾンビの出現 武装した謎の男

悪夢が始まろうとしていた__


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bkm