「うぁ…!はぁっ!ぴあーず、さぁ…ん」
「大丈夫。大丈夫だから、ナマエ…」
ナマエが目覚めてから数日__
衝撃的事実が検査の結果明らかになったのだ。
彼女の身体の中にTウイルスが形を変えて残っている。
やはりワクチンの投与が遅くなってしまった故の結果か、変異した状態で残ってしまったということだ。
それが今も彼女を苦しめている。
彼女を苦しめているのは今現在もウイルスが変異している状態だからということだ。
身体に馴染んで来れば発作的症状も少しは落ち着くだろうということだった。
どちらにしても予断を許さない状況だ。
そんな彼女の様子を見てピアーズはある一つの決断をしようとしていた。
「政府にナマエのことを報告しないでもらいたい?」
「はい。クリス隊長。
彼女は責任もって俺が監視します。どうかお願いします。」
必死にクリスに掛け合うピアーズ。
政府へ報告すれば間違いなく彼女はそこで監視下におかれるだろう。
二度と陽の目を見ることすら叶わないかもしれない。
だからと言ってそのまま家に帰すという訳にもいかないことはピアーズにも分かっていた。
「…確かに、政府へ知られれば彼女は確実に、ラクーン事件のシェリー・バーキンと同じ道を辿るだろうな。」
「俺は、勝手かもしれませんが彼女にはできるだけ普通の生活を送ってもらいたい。
___ナマエと約束したんです。絶対に守るって」
ピアーズの瞳の中に強い決意の色を見たクリス。
決して許されることではない。
だが反対してもピアーズは恐らく彼女を連れてここから消える。
クリスにはそう思えてならなかった。
そう考えれば自分の元で監視下にあってくれた方が、何かあったときにすぐに対処できる。
そう考えた。
「…お前の決意はよく分かった。
___しっかり彼女を守ってやれ」
ポンッとピアーズの肩に手を置くクリス。
「Yes sir!」
肩から手を離しそのままピアーズに背を向けて去っていくクリス。
__ああ
やはりこの人には当分敵いそうもない。
___半年後
仕事を終えたピアーズは、支部からそれ程離れていない自宅の部屋の扉を開ける。
__ガチャ
ドアを開けると奥の方からパタパタと小走りで駆けてくる小さい影が。
それはピアーズに思い切り抱き着いた。
「おかえりなさいっ、ピアーズさん!」
抱き着いてきた女を受け止めたピアーズは彼女の頬にキスを落とす。
「ただいま___ナマエ」
彼女のことは結局政府には報告せず、名目上ピアーズの監視下に置かれることになった。
あれから突発的な発作はありながらも定期的なワクチンの投与を行って彼女の状態はなんとか落ち着いている。
「そうだっ!ピアーズさん、私、働きたいと思っているんです」
いつまでもピアーズの脛をかじるだけでは何とも心苦しい。
そう考えて彼女は求人のチラシを彼に渡す。
「求人…?
いや、駄目だ。
俺から離れてもしものことがあったらどうするんだ」
「だから、これなら問題ないですよね?」
そう言って彼女が指さす個所をよくよく見てみる。
「BSAA北米支部雑務係…?…これは」
「ね?これならいいでしょ?」
そう言ってニコニコと瞳を輝かせながら自分に訴えてくるナマエ。
確かにこれなら自分の傍から離れなければ。
事情を知っているクリス隊長を始めアルファの隊員たちもいる。
だがピアーズはハッとしたように首を横に振る。
「だ、駄目だ!確かに俺はいるけど、それにしたって駄目だ!」
あそこには女に飢えた野獣のような男たちがウヨウヨといる。
勿論アルファの隊員たちが本気でそのようなことをするとはピアーズも思っていないが、ナマエがオフィスに来るとあっては確実に厭らしい目で見るだろう。
特に一部の隊員が。
「でもピアーズさんが守ってくれるんですよね?」
「それは、そのつもりだけど、」
「じゃあ大丈夫です!私、明日面接に行きたいので一緒に行きましょうっ!
ねっ?ピアーズさん」
一緒に暮らしてみてわかった。
意外と彼女には強引な面がある。
だがそれも惚れた弱みだろうか、彼女には強く言うことができない。
そして彼女はおねだり上手だ。
上目遣いで見つめられてピアーズは言葉に詰まる。
「……絶対俺から離れないように」
「はいっ!」
そう言ってピアーズの腕に手を絡めながらリビングへと促すナマエ。
「今日はピアーズさんの好きなご飯ですよ♪」
「マジか。楽しみだな」
仲睦まじく部屋に入っていった二人。
その姿はとても幸せそうだった。
___だがしかし、ピアーズの苦難は幕を開けたばかりだった
To be continue…?