17.待っていた
真っ白な部屋。
アルコールや薬品の独特な匂いが漂うここはBSAA北米支部に併設されている病院だ。


「………………」

ピアーズは目を閉じて昏々と眠り続けるナマエのベッドの傍らにいた。




__あれから一週間

エレベーターを降りたピアーズはその前に待機していたクリスたちと合流を果たした。
BSAA隊員たちによってバイオテロはほとんど鎮圧されていた小さな街。
すぐにナマエにもワクチンは投与され事なきを得た。


だが肉体的なことか精神的なダメージなのか、ナマエはあれから目を覚まさない。
ピアーズはほとんど眠ることもなく彼女の横に付き添い続けた。



「…ナマエ……目を覚まして」


彼女の手を握り祈り続けるピアーズ。

そんな時病室のドアが静かに開く。


「ピアーズ…またここに来ていたのか
。いい加減お前も休め、これではお前が倒れてしまうぞ。」

入ってきたクリスは綺麗な花束を持っている。
ピアーズに声を掛けながら花瓶に花を生ける。


「…隊長も、あまり休んでいないじゃないですか」


「お前ほどじゃない。」


ハハッと自嘲気味に笑うピアーズ。

聞けば彼女はピアーズを庇ってリッカーからの一撃を食らったということだ。


「…責任を感じている、か?」


「………それだけじゃないですね」


こんなつもりじゃなかったんですけどね、そう言うピアーズはその言葉とは裏腹にとても優しい目をしていた。


余程彼女のことが大切なのだろう。
地下での出来事はピアーズから大まかなことは聞いているがそれはあくまで事務的なことだけだ。
二人の間になにがあったのかまでは知らないが、ピアーズは間違いなく彼女に好意を持っている。
そうとしかクリスには思えなかった。



「お前をそこまで骨抜きにするなんてな」


「…ナマエは、可愛いですよ。いくら隊長でも渡しませんから…」




その時ピアーズの手の中で彼女の手がピクリと動く。


「!!ナマエっ、分かるか!?」




「……ぴあーず、さん?」

ゆっくりと目を開いたナマエ。
その目は確かにピアーズをしっかりと捉えていた。



「っ!バカ野郎…俺を守って怪我するなんて……、お前はバカだっ…」


彼女の負担にならないように優しくその身体を抱きしめるピアーズ。


震える彼の背を未だ力の入らない手で優しく撫でる。


「…ごめんなさい、ピアーズさん。不安にさせて…」



そんな二人の様子を見たクリスはフッと笑ったかと思うと静かに部屋を後にした。


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bkm