血だまりの中に倒れ伏すナマエ。
咄嗟にライフルを手に取りリッカーの脳へと打ち込む。
確実に脳を捕らえたピアーズの弾丸は、リッカーの活動を一瞬にして止めた。
急いで彼女へと近づくピアーズ。
彼女の背中はリッカーの鋭い爪で深く切り裂かれていた。
咄嗟に自分の首巻きを破いて止血する。
「ナマエッ!なんで俺を庇ったっ…!」
自分が最後まで油断しなければ彼女が傷つくことはなかった。
悔やんでも悔やみきれない。
___出血が止まらない
彼女が死ぬかもしれない。
それを考えた瞬間、いつも冷静なピアーズは殊更頭が冷えてくるのを感じる。
今自分がすべきことは彼女を助けること。
そのためには一刻も早く地上へ。
自分のすべきことを一瞬で整理したピアーズは、彼女の止血をしながらエレベーターの一階のボタンを押す。
「っう…!ぴあー、ずさっ、くるしぃ…!!」
「ナマエ!?…まさか、」
リッカーに寄って負わされた傷。
___ウイルスか
サァッと血の気が引く。
一刻も早く抗体を打たなければ、彼女は
ピアーズは無線を入れる。
「こちらピアーズ!応答してくれっ!…ックソォ!!」
空しく響くノイズ。
頼む。頼むから出てくれ、隊長!
何度も無線で呼びかけるピアーズ。
『___ザザザッ…、クリス、』
___通じた!クリスの言葉を待たずに必死に叫ぶピアーズ。
「Tウイルスのワクチンをっ、用意してくれっ!!ナマエが、ナマエが…!」
我を忘れたように叫ぶピアーズ。
それはどんな局面でも冷静沈着な普段の彼からは想像もできない位の取り乱し方だった。
クリスはそんなピアーズの様子に状況を把握したのかできるだけ冷静に彼に伝える。
『落ち着け、ピアーズ。今彼女を守れるのはお前しかいないんだ。』
クリスの低い声にハッと冷静さを取り戻すピアーズ。
そんな彼の様子を察したのかクリスは続ける。
『先ほどのホテルで他の生存者にワクチンを投与している所だ。地上に出ればワクチンはある。
そこまで彼女を守れるのはお前しかいない。
いいな、ピアーズ。』
___他にも生存者がいたのか
それが幸いした。ナマエは助かるかもしれない。
「____はい」
『よし。いいか__ザザ…俺たちが向かうまで、決してザザザ__』
ノイズを残して無線は完全に通じなくなった。
「はぁ…!はぁっ!」
もはや目を開けるだけの力も残っていないのか苦しそうな呼吸を繰り返すナマエ。
彼女の背中から胸部にかけて布でグルグル巻きにして止血する。
そして傷に触れないように彼女を背中におぶる。
「___絶対に俺が守るから」
エレベーターの扉が開いた
その瞬間ピアーズは眩しすぎる光に包まれた____