15.絶対絶命
「着替え終わった?ナマエ…っ!!」

「やっぱり大きいです…」

ピアーズさんのシャツは当たり前だが大きすぎて肩がずり下がってしまう。
少し不格好だが仕方がない。

「……行こう、すぐそこがエレベーターだ。」

フイッと私からすぐに視線を逸らして先に行ってしまうピアーズさん。
彼の反応に疑問を持ちつつも私は後に続いた。

「ピアーズさん!あれっ!!」

「ああ…漸く、だな。」

見えてきたのは恐らく荷物を搬出するための目的だったのだろう。
かなりの大きさの業務員用のエレベーターだ。


___漸く地上に出ることができる

だがそれはピアーズさんとの別れを意味しているのだ。
そう思うと胸が締め付けられるように痛くなる。




____ピアーズさんは、どうなのだろうか?

少しでも私のことを女として見てくれているのだろうか?
私との別れを、惜しんでくれているのだろうか?

だが彼の横顔からは何も読み取ることはできなかった。





「____行こう」

彼の手に引かれて私はエレベーターへと足を踏み入れた。



「こちらピアーズ、応答願います。」

エレベーターに乗った所でピアーズさんは無線で外界との通信を図っている。


『_ザッザザ…ピアーズ!? ザザ__無事だったか!』


ノイズ混じりだが確かに無線は通じたようだ。
ホッとした表情へと変わるピアーズ。


「彼女__ナマエも無事です。
隊長、この無線もいつまでつながるか分からないので用件だけ伝えます。」


『了解__ザザッ』


聞き取りずらい。やはり電波が弱いようだ。
ピアーズはクリスの言葉を聞き逃さないよう無線に集中する。


「俺たちはショッピングモールの地下に位置する場所に居ます。
今から業務用エレベーターで地上まで上がります。
できればそこまで迎えにきてもらいたい。」


『ザザザッ___分かった。
鎮圧しながらそちらに向かう。ザザッ__ピアーズ……』


「…隊長?今なんて?」


クリスの言葉が聞き取れず、耳に手を当ててさらに無線の音に集中するピアーズ。

無線が通じたことによる安心だったのか、はたまたそれに集中し過ぎてしまったせいなのか__




ピアーズは気が付かなかった。

___己の上から忍び寄る影の存在に


己の隊服に滴る粘度の高い唾液に気が付き上を見上げる。
だがその時にはもう遅かった。
エレベーターの天井にへばり付くようにして待ち構えていたリッカーはピアーズに向かって飛びかかる。



____しまった

目を閉じるのも忘れて自分に飛びかかってくるソレを見ることしかできない。
だが次の瞬間、背中に衝撃を感じて前方へ倒れる。

咄嗟に踏みとどまり倒れることは防いだピアーズ。


___何が起きた

自分は今完全にやられていたはずだった。


だが何故生きている?

嫌な予感がし恐る恐る後ろを振り返る。



おびただしい出血

その中心にいる人物に気が付きたくはなかった




「___ッナマエ―!!」

ピアーズの叫びがエレベーターの中に響いた


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bkm