14.ボスの正体
「ディアボロ!!貴様はここで俺たちが始末する!!」
リゾットの言葉に対して少年、もといディアボロは無反応だった。
ナマエは疑問に思っていた。
(若すぎる…。)
ディアボロはトリッシュの父親。どんなに少なく見積もっても30歳前後であるはず。
それなのに目の前の男はどこをどう見たって私と同じくらいの少年。
だけどその雰囲気、そして何よりも目の前にたたずむスタンド、『キング・クリムゾン』は間違いなくディアボロのスタンドなのだ。
「ボス、いいや…、ディアボロ。貴様の能力は分かっている。時間を吹っ飛ばす能力…。その間に起こったすべての事象をなかったことにして結果だけを残す力。
見つからないはずだ。誰も顔も見たことすらないというのもナマエから話を聞いて納得がいった。」
「……なるほど。警戒するべきは我が娘トリッシュでも、ましてやブチャラティでもなかったというわけか。
ナマエ・ミョウジ。」
殺気。
突然向けられた覇気に身体が硬直する。
『殺される』。教会で対峙した時と同じか、それ以上のプレッシャーに頭が真っ白になった。
しかしそれは目の前に立ちはだかった大きな背中によって遮られた。
「……ぎ、あっちょ………。」
「俺から離れるんじゃあねぇぞ…。コイツはヤバイ。」
もしかしたらディアボロはこれを狙っていたのかもしれない。
ギアッチョが庇ってくれたことで安心したのか、一瞬スタンド能力を解除してしまった。
「キング・クリムゾン!!」
「しまった」と思ったときにはもう遅かった。
過程が吹っ飛び結果だけが残る。
ディアボロは私たちが気がついたときには忽然と姿を消していた。
「な、なにぃ!!」
「消えやがったぞ…!!」
「ギアッチョ、メローネ、落ち着け。今のがディアボロの能力…。さすがに今まで誰もヤツの姿を見たことがある人間はいないと言われているだけのことはある…。さすがにこの人数を相手に正体を隠しながら戦うのは不可能だと思ったのだろう。
探せ。奴が飛ばせる時間は数秒程度。まだ遠くには行っていないはずだ。」
プレディツィ・オーネで未来を見た私には未来のディアボロがどこに向かっているのかが分かった。
しかしその行先を理解した途端居てもたってもいられず立ち上がる。
「ど、どうしよう……!このままだと、間に合わないッ!!」
衝動的に走りだそうとしたナマエの手を掴んで止めたのは、一番近くにいたギアッチョだった。
「おい!!どこに行くッ!?」
「ギアッチョ、離して!!このままだと間に合わない…っ!!」
「説明しろッ!!ヤツは今どこに向かっている!?」
「説明なんかしてる時間なんてないよ!!このままだとアバッキオが…!!」
パニックになりかけているナマエに離れた場所にいた他の三人も寄ってくる。
彼女の言葉からディアボロがどこに向かったのか理解したリゾットは、一度目を閉じると決断したようにギアッチョの目を見つめる。
「ギアッチョ。ナマエを連れて例の場所へ急げ。」
プロシュートとメローネはリゾットの言葉に驚いたように声を上げる。
「本気か?リゾット。…実際に体験してみて分かった。話に聞いていた以上にディアボロの能力は危険だ。」
「リーダー。俺もプロシュートに同意だ。ナマエがいれば確かにディアボロの能力は無効化できるが、その間ナマエは能力を発動しっぱなしなんだろ?いつかは力尽きる。
ヤツと戦うならナマエが力尽きる前に俺たちも総力を上げて叩くべきだぜ。」
「それじゃあ、間に合わない……っ
お願い!!行かせて…!」
ナマエの焦った声にメローネもプロシュートも反対する。
しかしギアッチョはそれを無視してナマエを抱き上げた。
「ひゃあっ!」
「悪いなメローネ、プロシュート。俺たちは先に行くぜ。
テメェらは後からゆっくりとついて来ればいいさ!いいな!?リーダー!!」
リゾットが一つ頷くのを見届ける前にギアッチョはナマエを肩に抱え上げて飛び出していた。
後ろからプロシュートとメローネの声が聞こえる。
しかしそれを無視して突き進んだ。
「…ギアッチョ。」
「しゃべんな。舌噛むぜ。」
こうして肩に抱えられていると彼と初めて出会ったときのことを思い出す。
その時はまさかこんなことになるなんて思っていなかったけど、あの時は彼のせいで死にかけたけれど、それでも出会えて良かった。
今だからこそそう思える。
「おいコラ!!余計なこと考えてる暇あったらよぉ、てめぇはてめぇのやるべきことを考えてろ!!ボケがッ!!」
ギアッチョの言葉に思考が引き戻される。
そうだ。アバッキオを助ける。
それが今の私のやるべきこと。
「ギアッチョ。…ありがとう。」
風切り音で私の声は届かなかったのか、彼からの返事は返ってこなかった。
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もうすぐギアッチョともお別れです。
亀更新な上に短くてすみません。
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