Day'seyeをあなたへ | ナノ

 27.Ti amo

*ぬるいですがほんの少しR12程度の表現あり。




「すまねぇ…!ブチャラティ…!俺は、ナマエを守れなかった…っ!目の前でまんまと敵に攫われちまったんだ…っ」

ギリギリと強く拳を握りしめるアバッキオを責められる人間など、この中にはいなかった。

「いいえ、アバッキオのせいではありません。あのギアッチョとかいうスタンド使いは非常に珍しいタイプのスタンド使いでした。突然あんなスピードの敵が現れても咄嗟に動ける人間はいないでしょう。…僕とミスタがアイツをヴェネツィアに入れる前に倒していれば、こんなことには……。」

「…アバッキオ、ジョルノ。お前たちのせいではない。俺たちについて行くと決めた瞬間からナマエもこういう危険があるということは覚悟の上だった。敵の狙いはおそらくナマエとトリッシュ、もしくはディスクの交換だろう。ナマエは絶対に無事だ。アバッキオ。お前のムーディ・ブルースで追跡できるか?」

「ああ。できるにはできるんだが…。敵のスピードが速すぎて生身では全く追いつけなかった。ムーディー・ブルースのリプレイでも同様だ。今ミスタがバイクを調達しに行った。すぐに…、」

「おい!バイク!一台だけあったぜ!」

ミスタがどこからか持ってきたバイクをブチャラティが受け取る。

「は、早く追いかけようぜ!ナマエが心配だよっ!!」

泣きそうな顔をしたナランチャの言葉にブチャラティは頷く。

「誰が行くんですか?このバイクは一人乗りだ。」

フーゴの言葉に全員がブチャラティのほうを見た。

「…本来ならアバッキオ、ムーディー・ブルースで追跡ができるお前が行くべきなんだろうが…、俺に行かせてもらいたい。案内を頼めるか?」

「ああ、勿論だ。お前が一番適任だ。頼んだぜ。」

「時間が惜しい。すぐに頼む。」

アバッキオはムーディー・ブルースを出現させ能力を発動する。およそ10分前の出来事をムーディ・ブルースはリプレイし始めた。
ムーディ・ブルースは徐々に姿を変えて、ついに白いスーツを纏った男の姿になった。
スーツの男は海を凍らせて堤防を乗り越えると、一言二言叫んで何かを担ぎ上げた。これがナマエであることは確かだろう。ブチャラティはバイクに跨りエンジンをかけると男を追いかけて飛び出した。

「場所が分かり次第連絡する!テメェらは安全なところでトリッシュとディスクを守れ!いいな!!」

バイクに乗ったブチャラティの姿はあっという間に見えなくなった。
皆、ただ無言で祈ることしかできなかった。

「ブチャラティ…、絶対ナマエを助けてくれよぉ…!」

ナランチャの悲痛な声が響く。
誰も何も言わないが、全員の心の中は同じだった。

◇◇◇

港からバイクで5分ほどの、ある廃屋の前まで来るとムーディ・ブルースが追跡を止めて元の姿に戻った。
ここが目的地ということだろう。
ブチャラティはバイクを飛び降りてドアノブに手をかける。

「っ!?」

鉄製のドアノブは驚くほど冷え切っていた。反射で思わず一瞬手をひっこめる。
嫌な予感がする。この扉の先に何かとんでもない光景が広がっているような…。
警戒しながらも意を決してブチャラティは冷たいドアノブを開け放った。

寒い。何故この家の中だけこんなに寒いんだ?
困惑しながらもゆっくりと冬の世界のような家に足を踏み入れる。

白い息を吐きながらブチャラティは声を上げる。

「ナマエ…?」

調度テーブルの影になっていてリビングの奥まで良く見えない。
自分の心臓の音がやけに大きく聞こえた。

「___ナマエッ!!」

テーブルの影に倒れこんでいるナマエをブチャラティは発見して駆け寄る。
血の気がない。
まるで死人のように真っ白な彼女に、自分の背筋が凍りつく。

「ナマエ!大丈夫か!?ナマエ!!」

抱き寄せた彼女の身体は氷のように冷たかった。
ぐったりと脱力して全く反応のないナマエに、ブチャラティは言い知れぬ恐怖を感じた。

「ナマエ…!このままでは……っ!」

死んでしまう。自分の命よりも大切なものを、失ってしまう。
ブチャラティは彼女を抱え上げて家を飛び出す。するとバイクに跨り急いである場所に向かった。



場所なんかどこでもよかった。とにかく今は冷え切った彼女を温めなければならない。
仲間の元へ戻っている時間はないが、敵が戻ってくる可能性のあるあの家からは離れたかった。
あまり手入れが行き届いているとは言い難いが、すぐ近くにあった一つのホテルへとブチャラティは彼女を抱えて転がり込んだ。
ホテルのオーナーは突然飛び込んできたどう見ても堅気ではない男と、その男が抱える死にそうな女を見て悲鳴を上げる。

「お、お客さん!困るよ!うちは面倒ごとはごめんだよ!」

ブチャラティはうっとおしそうに店主をギロリと睨むと、カウンターにあり得ないほどの額の金を置いた。
それを見た店主は途端上機嫌になり、「どうぞ、どうぞ」と部屋の鍵を一つ差し出す。先ほどとは打って変わった態度をブチャラティは無視して急いで部屋へと向かった。

部屋に着くなりブチャラティは備え付けられたベッドに彼女を寝かせた。
息も脈も今はあるが非常に弱々しい。このままにしておいたら確実に死んでしまう。

「……すまない。ナマエ。」

ブチャラティは力任せにナマエの服を破り取り去った。きっとその服は凍っていたのだろう。溶け始めて身体の芯まで冷えるような冷たい水が滴り落ちた。
服を破けば普段は見えない彼女の素肌があらわになる。ナマエの背中に片手を差し入れたブチャラティは、迷わず彼女のブラジャーのホックを外した。
プツン、という音と共に、大きな胸がふるりと揺れた。
一瞬それに目を奪われたブチャラティだったが、必死に目を逸らして今度は靴と靴下を脱がせる。
ナマエの身体は氷のように冷たく、ブチャラティは自分のスーツの上着を脱ぐと彼女を抱きしめて自らもベッドに横になった。
部屋に備え付けてあった毛布を被り、同じくびしょ濡れのスカートとショーツも抱きしめたまま脱がせてしまう。全くの生まれたままの姿になった彼女をこれ以上密着できないという位に強く抱きしめた。

「ナマエ…、頼む…。死ぬな…。お前は死んではダメだ…。」

失われた血気を戻すように、ブチャラティは彼女の顔に軽く口づけた。額、頬、目、耳…。舌でなぞるように彼女の肌に口づけると、時折ピクリと彼女の身体が反応した。
そのまま首筋、そして鎖骨へと舌を下していく。ブチャラティの赤い舌が、ナマエの白い肌をゆっくりとなぞる。

「ぁ、…ん……。」

「ナマエ…!?分かるか?」

ブチャラティの声に反応したのか、ナマエの目がわずかに開いた。

「うぅ…、さ、むいよ…、ブチャラ、ティ……。」

「俺が付いている。ナマエ、気をしっかり持つんだ。」

未だに冷たい彼女の背中に手をまわして更に身体を密着させる。触れ合っていない箇所などないくらいに。そうでもしないと、冷え切った彼女の身体はすぐに冷たくなっていってしまうのだ。

「あったかい…、」

ナマエの柔らかい胸が、ブチャラティの胸板に押し付けられて柔らかく形を変える。その感触にブチャラティは気がつかないフリをした。意識してしまえば最後、必死に押さえつけている理性がどこかにふっとんでいきそうな気がしてならなかった。
ナマエの口元が何かを言いたそうに小さく動く。ブチャラティはそれを聞き取ろうと彼女の顔に耳を近づける。

「………で、」

「なんだ?ナマエ…?俺に何を言いたいんだ?」

「___行か、ないで。ブチャラ、ティ……。」

彼女の口から出た言葉に、ブチャラティは一瞬思考が停止した。
ナマエは今なんと言った?自問自答しても明確な答えなど帰ってくるわけもない。
ただの寝言、そう思い込んでしまえば楽なことは知っていた。
だが今の言葉は忘れもしない。昔、幼い彼女が故郷を去る自分に向けて言った言葉だった。
彼女の頬をつたう涙がその事実を物語っている。きっと今、彼女は昔の夢を見ているのだろう。
同情や贖罪なんかではない。
彼女の涙を見た瞬間、胸が張り裂けそうになるくらい痛んだ。彼女にこのような涙を流させる自分が心底憎らしかった。

ブチャラティの身体は、無意識のうちに動いていた。

「ナマエ。俺は、お前を___、」

ベッドに埋もれるナマエに覆いかぶさるように、ブチャラティは彼女の柔らかい唇に自らの唇を押し当てた。