13.気がついた時には、
その後何とか二人には何故承太郎さんと抱き合っていたということを弁明をして事なきを得た。
康一君は納得してくれたようだったが仗助はどうだったのだろうか?
結局その日は時間が遅かったこともあり、承太郎さんの車で三人とも送ってもらったからその後は話す時間もなかった。
あの時の仗助の顔を思い出すと今でもゾクッとしたものが背筋を通る。
それほどまでに普段は絶対にしないような鋭い表情をしていた。
(仗助、何であんな表情をしていたんだろう。)
その日から何日か、同じクラスにも関わらず仗助と話す回数はめっきりと減った。康一君とはいつも通りだ。なんとなく避けられているのであろうことは分かる。だが何故そのような行動をとるのかが分からず、謝ることすらできなかった。
億泰君と康一君とも仲が良い仗助は必然的に三人でいることが多い。さすがに避けられていると感じているのにそこに入っていく勇気は私にはない。
相談する相手もいない私は結局ある場所に電話をかけるのであった。
「____で、どう思います?承太郎さん。」
『………てめぇは他に友達がいねぇのか。』
そうなんです。彼らしか私の友達はいないんです。というのはあまりにも悲しすぎるので言うことができなかった。
「明らかにあの間田のことがあった日から避けられるようになったんですよ。私、気絶しているときになに何かしちゃいましたかね?」
『俺が知るはずねぇだろ。仗助がお前を連れてきた時お前はすでに気絶していたんだからな。』
「そうですか…。じゃあやっぱりその前に何かしちゃったんですね…。」
電話越しでもうなだれているのが分かる名前に少し笑いが込み上げる。
____そういえば
仗助がコンビニから調度帰ってきたときに泣きわめく彼女を落ち着かせようと抱きしめていたことを思い出す。
彼女が気絶している間、うざったい位ずっと名前の心配をしていた奴が、あの後からめっきり話さなくなった。
これが事実だとしたら余計に自分の口から真実をいう訳にはいかなくなった。鈍い彼女に少しいたずらしてやろうか、という気持ちが湧き上がる。
『てめえが俺にかまけているせいじゃあねぇのか』
「え……?」
先ほどまでうるさいくらい話していた名前は突然押し黙ってしまう。
(一体何だってんだ。)
『そんなことよりも、虹村形兆を殺したスタンド『レッド・ホットチリペッパー』が仗助の家に現れたらしい。』
「え!?」
そんなこと一言も聞いていない。やはり仗助は私のことを怒っているのだろうか。
今までだったら朝私の家まで彼は迎えに来てくれて、帰りだって康一君と億泰君と帰路につくことが常だった。それがあの日を境にぱったりとなくなった。
承太郎さんの『ハァ』という溜め息と共に現実へ戻される。
『奴のスタンドは電気の通っている所ならどこでも移動できる。お前も十分に注意しろ。』
「…承太郎さんたちは、これからどうするんですか?」
『まずは奴を操っているスタンド本体を見つけ出すのが優先だ。これからそれが可能なスタンド使いを港まで迎えに行く。
あらかじめ言っておくが今回は絶対に来るなよ。まだ間田にやられた怪我が万全じゃねぇだろうからな。』
「でも…!」
皆あの虹村刑兆を殺した危険な相手と戦うのだ。そこに自分だけ参加できないのは納得がいかなかった。
『名前。』
承太郎の強い口調に何も言えなくなってしまう。
『…お前の力は重要なものだ。今は養生してこれから起こりうる危機に備えてほしい。
___頼む。』
「…っずるいですよ。承太郎さん…。」
そんな風に頼まれたら、断れないではないか。もしかしたら彼は私の気持ちに薄々感づいているのかもしれない。
それでそのような頼み方をしているのなら随分と酷い人だと思う。だが私を心配してくれているという事実がただ嬉しかった。
『チリペッパーの本体が見つかって全ての問題が解決したら、俺はアメリカに帰国しようと思っている。』
「……え?アメリカ?」
『ああ。お前には一応話しておこうと思った。』
その後は頭が真っ白になってしまいどうやって電話を切ったのか分からなかった。
分かっていた。杜王町の人間じゃない承太郎さんは全てが終わったらこの町から去ることは。
私たちは決して交わることはない、お互い遠い存在であることも。
気が付かないフリをしていた。
でもこの問題が解決したら承太郎さんはこの町を去る。もう二度と会うこともできないかもしれない。
____感じたことがない虚無感と胸の痛みが私の身体を支配した