『怖くなんかないよ』
『優しい典明くんが大好きだよ』
『私はずっと典明くんの傍にいるからね』
名前、君はいつだって僕の味方だった。
僕は君のことが好きだった。
この旅が終わって帰ったら、君にこの気持ちを伝えるつもりだった____。
午後5時15分、
日本は今、夜だろうか?
ジョースターさんにメッセージを伝えるために、己が放ったエメラルドスプラッシュによって街のシンボルである時計塔はその時間で時を刻むのを止めていた。
「ぅ………ぐっ……、」
身体が動かない。
僕の身体は、貯水タンクにめり込んだまま、うんともすんとも動かなくなってしまった。
腹部に手を当てるとドロリと生暖かい嫌な感触を感じる。
霞んだ目で見ただけでもわかる。
____死、
他人事のように、ただ漠然とそう思った。
(ごめん、名前、君との約束、守れそうにない……)
きっと君は、僕が死んだと知ったらワンワン泣くだろう。
もしかしたら彼女の心に深く、深く傷をつけるかもしれない。
泣き叫ぶ彼女を想像して、風穴が空いた腹よりも胸が締め付けられるように痛くなる。
この旅に同行したことを後悔してはいない。
僕はこの仲間に出会えて、共に命をかけて戦えて本当に良かったと思っている。
それは本当の話だ。
____だが、僕は、
この旅が終わったら、両親に全てを打ち明けるつもりだった。
今まで話せなかった分の会話をしてみたかった。
友達ももっと沢山作ってみたかった。
____彼女に、自分の思いを伝えたかった。
だがそれももう、叶いそうにない。
腹部からはとめどなく血液が溢れ出て来る。
痛みも感じない。
生暖かいものが、両頬を濡らした。
願わくば、彼女が幸せになれるように。
僕がいなくても、支えてくれる人が現れるように。
願うしかなかった。
僕はもう、君に触れることさえ叶わないのだから。
(あぁ、もう殆ど目も見えない)
記憶の中の彼女は優しい笑顔を自分に向けていて、
こんな天使がお迎えに来てくれるのなら悪くないかもなと、どうでもいいことを思った。
『典明くん、世界で一番、あなたが好き』
あぁ、名前、
僕も、
「…………名前、
ぼ、くも……、君のことが………、」
世界で一番好きだった_____。
END