車を走らせること数時間、徐々に草木の生い茂る場所に入ったと思ったときにそれは見つかった。
「み、水じゃぁ!水があったぞっ」
ジョセフさんの言葉に車を降りてその小さな泉を見る。
「これは…、湧き出ているようだ。綺麗な水で間違いはないだろう。」
「そうと決まればよぉ、早いところこの汗を流したいぜ!!もうベッタベタでハンサムが台無しだぜ〜」
そう言ったポルナレフは唐突に服を脱ぎ始めた。
「ポルナレフ!女性の前で服を脱ぎ始める奴があるか!」
花京院君の言葉に一瞬疑問符を浮かべたポルナレフだったが、すぐに誤魔化すように笑い始める。
「え?あ、あぁ!!すまねぇ名前!すっかり忘れてたっ」
ハハハと笑いながら悪びれもなく言うポルナレフをジト目で睨む。
「どうせ私は女らしくないですよ。」
「こらっポルナレフ!こういう時はレディーファーストじゃろうが!
名前、ワシらは周りを見張っているから先に身体を清めてくるといい。」
ジョセフさんの気づかいに思わずギョッとしてしまう。
ありがたい申し出だが正直な所こんな場所で裸になるのは気が進まなかった。
誰かが覗くなどとは思っていないが、何となく男性がいる遮蔽物がなにもない空間で裸になることは嫌だった。
「わ、私はいいですっ。濡らしたタオルで拭くので!4人で汗を流してきてください。」
それだけ伝えて私は泉から見えない草陰に移動した。
向こうから聞こえる水の跳ねる音からしてきっとみんなは水浴びを始めたのだろう。
私も自分の身体を清めるために先ほど濡らしたタオルで身体を拭き始める。
だがやはり服を着たままでは限界がある。
(ブラジャーとってしっかり拭きたい…。)
結局汗の染み込んだ服を着るのだから同じかとも思ったがそれでも爽快感が違うだろう。
それに皆今頃汗を流しているのだ。
一人だけ汗臭かったら本当に女として終わっている。
いそいそと私はセーラー服を脱ぎブラジャーのホックを外し、その辺にある岩の上に置く。
ベタベタした上半身を丁寧に拭く。
拭き取った部分はスゥとつき物が落ちたみたいに清涼な感覚だ。
その時だった
「___名前」
ザクと砂を踏みしめる音がして思わず身体を硬直させる。
慌てて手に持っていたタオルで胸を隠す。
(こ、この声は……)
「じょ、承太郎…!?なんでここに……!?水浴びは…!?」
「うるせーから後にしようと思ってな。一服しようと歩いていたら上半身裸のお前を見つけたってとこさ。
ったく…、いつ敵に襲われるかわからねぇ状況で一人になるなっていったろーが。」
背中から飛んでくる承太郎の声にバクバクと心臓が跳ねる。
「す、すぐ終わるから…!」
向こうに行って、そういう意図を持って言った言葉だったが彼がその場を離れる気配はない。
身動きできずその場に硬直する。
「ね…、承太郎……っ!?」
耐えかねて首だけで振り向いた途端、思っていたよりも近いその距離に目を見開く。
「タオルよこしな。背中、一人じゃあ拭けねーだろ。」
さらに言われた言葉に驚愕する。
そんなことできる訳ないじゃないか。
こっちは上半身裸なのだ。恥ずかしすぎる。
「だ、大丈夫…。気持ちは嬉しいけど本当に大丈夫だから…っ」
そう言った途端後ろから大きな手に片方の肩を掴まれる。
直接触れた承太郎の体温にビクリと身体を跳ねさせる。
その瞬間反対側から伸びてきた手に胸を隠していたタオルをあっけなく盗られてしまった。
「あっ!?ちょ…、承太郎っ!!」
慌てて両手で胸を隠す。
「なぁに、遠慮するな。」
後ろを振り向けないから彼の表情は分からないが、きっとその顔はニヤリと笑っているのだろうと容易に想像がついた。
承太郎はタオルを首筋に当てたかと思うと、丁寧に丁寧に拭き始めた。
「じょ、承太郎っ、冷たい!」
「我慢しろ。」
首筋から背中をタオルのざらざらとした面が触れる度にビクビクと反応してしまう。
それが恥ずかしくて自分の身体を抱きかかえるように身体を丸める。
拭くときに私の身体が動かないように承太郎の手が肩に添えられており、そこだけが不思議と熱を持っている。
「あ、ありがとう…。もう大丈夫だから。」
承太郎からタオルを受け取ろうと手を伸ばすが何故か彼はその場から動こうとしない。
疑問に思い首を傾げる。
「あの…、承太郎?どうしたの?」
「こっちを向きな。」
「へっ!?」
突然なにを言いだすのかこの男は。
向ける訳がないだろう。
「ま、前は自分で拭けるから…!本当に、大丈夫っ!」
「いいから、遠慮するな。」
「え、遠慮とかじゃなくて!だ、ダメっ!恥ずかしいから……。」
「……『承太郎さん』には見せていたのに、俺は駄目なのか?」
「っ!!そ、それとこれとは、状況が…。それに、同一人物…、」
「…分かっているつもりなんだがな。イラつくぜ。
例え俺自身だろうと、俺の知らないお前を他の奴が知っているってのはな…。」
承太郎がその顔を私の肩口に埋めてくる。
彼の吐息が首筋に当たって鳥肌がたってしまう。
「なぁ?名前…?」
耳元で低い声で囁かれてビクンと身体を跳ねさせる。
「うひゃぁ…!じょ、承太郎…、」
蕩けそうになる理性を総動員してなんとか言葉を発する。
「や、やっぱり駄目だよ…!こんな場所で…、すぐそこに皆いるんだからっ!」
「………手を下ろせよ。後ろからは見えねぇから。」
「だ、だめ…」
「名前……。」
私の頭を横から固定するように手で抱え込んだかと思うと、耳の中に息を吹き込むように名前を呼ばれる。
私の耳と承太郎の唇はほとんどゼロ距離で、必然的に耳に触れる彼の唇。
彼が話す度に震える唇の振動を拾ってしまい、身体が跳ねる。
「ひっ…!そ、そんな所でしゃべらないでぇ…!」
耳の方に意識が集中してしまい、胸を隠していた手がおろそかになってしまう。
頭を固定していた方の手が離されたかと思うと、後ろから腕ごと身体を抱え込むように固定されてしまった。
「ぅあっ!じょ、承太郎!!や、やだ!恥ずかしいよぉ…!」
「やれやれ、やかましい女だ。俺からは見えないから大人しくしていな…。」
絶対嘘だ。
身体の大きい承太郎に抱え込まれている今の体勢は、いくら後ろからとはいえ露出した前の方まで丸見えだろう。
思い切り力を込められている訳ではないがその拘束は強く、逃げられそうもなかった。
身をよじりなんとか承太郎の胸の中から脱出しようと試みるが、その前に承太郎の手の方が先に動いた。
ひんやりとした感覚。
タオルが私の鎖骨に当てられていた。
少しずつ胸元に近づくその感触から逃げたくて、思わず承太郎の肩に頭を預けるようにして身体を反らす。
「……綺麗だな」
「あっ…!見てないって言ったのに…っ」
「お前が見えるように身体を反らしてきたんだろーが。」
こうして話している間にも鎖骨を拭いていた手は下の方へ降りてきて、私の胸へと触れてくる。
タオル越しに感じる承太郎の体温にどうしようもなくなってしまう。
「んっ…、ひんっ!」
胸の谷間、そして下から持ち上げるようにタオルで拭かれる。
わざと胸の中心避けるようにしてタオルを動かす承太郎に、いつの間にかはっきりと胸の突起が立ってしまっていた。
「……こんなに立たせて、エロい女だな。」
「っ…///」
承太郎の直接的な言葉にカァと顔が熱くなる。
(エロいのはどっちだよ!)
文句の一つでも言ってやろうかと彼の顔を見上げるが、それは叶わなかった。
承太郎がタオル越しに胸の先端を指の間に挟んでしまったのだ。
突然の刺激に私の身体はビクッと弓なりに反る。
「やぁ…っ!承太郎…!!どこ触って…!?」
「俺は身体を拭いてやっているだけだぜ。」
悪びれもなく言い放つ承太郎を睨みつけるが、涙ぐんだ瞳ではたいした攻撃力にはならないようだった。
拭いてやっているだけという割には、敏感な胸の先端を刺激するような明らかな動きにビクビクと身体が動いてしまう。
私のお腹に回った太い承太郎の腕に縋りつくように、軽く爪を立ててしまう。
「っん…!はぁ、ん…、ぁうっ!」
先端をクリッと引っ張られるように刺激されたことによって大きな声を上げてしまう。
「おい、あんまりデケェ声出すんじゃあねぇ。アイツらに気づかれるぞ。」
「うぁ…、だ、って、承太郎がぁ…!」
やはり先ほどの自分の声は少し聞こえてしまっていたようで、ポルナレフの大きい声が草むら越しに聞こえてくる。
「今なんか声しなかったか?」
「そうですか?僕には聞こえませんでしたが…。」
「おっかしいなぁ〜。確かにしたぜ。こっちのほうからよぉ。」
ガサガサと草むらをかき分ける音が少しずつこちらに近づいてくる。
(ま、マズイ…!)
一気に現実に引き戻された私は慌てて自分を拘束する承太郎に声をかける。
「承太郎…!離してっ、ポルナレフたちが来ちゃう…!」
だが承太郎が言った言葉は予想外のものだった。
「……で?」
「え…?だから見られちゃうから…!」
「見せつけてやればいい。」
承太郎の言葉に開いた口が塞がらない。
「な、何言ってんの…!? ひんっ!」
再び胸の先端をキュッと挟まれたことで文句を言うことができなかった。
「ほら、やっぱり声がしたぜ。名前〜!大丈夫かぁ〜?」
ポルナレフの声がもうすぐそこからする。
(見られちゃう…!)
覚悟したその時だった。
「ポルナレフ、名前は一人で身体を拭くと言っていた。
鉢合わせたらそれこそマズイ。彼女が帰ってくるまで待つべきだ。」
「おっと!そうだったな…!一応アイツも女だからな。プライバシーってもんを大切にしてやらなきゃぁな。」
二人の話声が遠ざかっていく。
私はホッと胸をなでおろした。
承太郎の腕の拘束が緩くなっているうちにそそくさと抜け出して素早く服を着る。
「承太郎のばかっ!こんなところで、あんな…!」
「何言ってやがる。てめぇも喜んで鳴いていたじゃあねぇか。」
「んな…っ!!ばかっ!もう知らない!」
承太郎をその場において私は皆がいるであろう焚火の火が見える方へと向かった。
「…ポルナレフの奴め、邪魔しやがって……。」
後に残った承太郎は一つ舌打ちをしたのだった。