starry heavens | ナノ

ジョセフとポルナレフがそれぞれホテルへと戻ってきた頃には、すでに辺りは暗くなっていた。
何故かボロボロで戻ってきた二人。
ポルナレフが送り届けようとしていた少女は実は人間ではなく、敵スタンド使いがカモフラージュにただ美人の皮を被っているだけだということを承太郎と花京院は聞かされた。

逆にジョセフとポルナレフは二人から先ほどこの部屋で起こった驚きの出来事を聞いた。
当事者である名前は疲れ切ってしまっていたのか、あの後から気を失うようにパタリと眠ってしまった。
その手は彼女の寝るベッドに腰かけた承太郎の服の裾をギュッと掴んでいる。
承太郎はその手を外すこともなくジッとその場に腰かけていた。


「なんと…!わしらが敵に襲われている間にそのようなことがあったとは…。」

「俺らは俺らで大変だったけど、こっちはこっちで大変だったみたいだなぁ〜……。」

ポルナレフは安心したように眠る名前の頭を優しく撫でる。


「ジョースターさん、DIOは明らかに名前に興味を示しているような言動をしていました。
名前の能力は正直言って戦闘向きではありません。彼女をこのまま同行させるのは危険なのでは…。」

花京院の言葉にジョセフは腕を組みながら考え込む。
だがそれを遮るように承太郎は答えた。


「コイツはこのまま連れて行く。」


「正気か?承太郎。君も聞いただろう。
DIOは何故かは分からないが名前を狙っている。彼女が危険な目に晒されても良いと君は言うのか?」

「……いや、承太郎の言う通り、名前はこのままワシらと共に行く方が安全と思う。」

「ジョースターさんまで…!何故です…?」

「…DIOはすでに名前に目を付けてしまったのだろう。
恐らく奴は名前がこの世界の人間ではないことをどこかで感じているのだ。それに興味を示している。
今更彼女を日本に送り返したとしてもDIOの脅威にさらされることは変わらない。」

ジョセフの最もな意見に花京院も言葉を詰まらせる。


「だったら近くに置いておいた方がワシらも守りやすい。
___だろう?承太郎。」

ジョセフの言葉に承太郎はハァとため息をつく。


「…そういうことだ。花京院、ポルナレフも、異論はないな。」

「俺は別に異論はないぜ。それに戦闘向きじゃあないって言っても名前だってスタンド使いなんだぜ。
しかも弱っちそうな見た目に反して鋼鉄の防御力を持ってるんだ。『守る』ってことに関しちゃあこの中の誰よりも優れているぜ。」

ポルナレフはまるで自分のことのように名前のことを自慢げに話す。
その顔はどこか父性のようなものがにじみ出ていた。

「……承太郎。君がそう決めたなら、僕に異論はない。」

最初は渋っていた花京院も、最終的にはジョセフの説明で納得したようだ。


「決まりだな!だが名前を一人にするといつ再び今日のように襲われるか分からん。なんせ相手はあのDIOじゃからな。
名前だけじゃない。これからは出来る限り二人以上で行動することを心掛け、敵に隙を与えるな。」

ジョセフの言葉に一同は頷く。
敵もいよいよ本腰を入れてくる頃だろう。今まで以上に注意してかからねばならない。



「ジョースターさん。寝るときとか、ホテルの部屋はどうすんだよ?」

「どうするもなにも、仕方あるまい。今名前を一人にする訳にはいかん。またいつDIOに襲われるか分からんからな。」

ジョセフのその言葉に3人は顔を見合わせる。


「………誰が、一緒の部屋になる?」

ポルナレフの言葉に手を上げる者はいない。
若い男たちの考えは皆同じだった。

『正直、この状況で我慢できるか分からないから一緒の部屋になりたくない』

旅を始めてすでに二週間程が経とうとしていた。
その間、敵のスタンド使いに襲われ続ける日々。また、それを危惧してなかなか一人になる時間などなかった。
つまるところ男なら誰もがある生理的現象、中々それを満たすことができる状況ではなかったのだ。
必然的に溜まっていく欲求。
できれば女と同じ部屋にはなりたくない、ジョセフ以外の皆が思った。


「承太郎とワシでいいんじゃないか?」

そんな若い男衆の気持ちを無視して、ジョセフはあっさりと言い放つ。

「さすがに若い男女が二人一部屋というのはマズイだろう。だから三人で一部屋、どうじゃ!?どうやら承太郎は名前から離れられないようだからのぉ〜」

承太郎の学ランの裾をしっかりと握りながら眠る名前を見て、ジョセフはニシシと笑う。


「な…!?オイ、ちょい待ちな。俺は反対だぜ。」

珍しく焦った声を上げる承太郎を無視して花京院とポルナレフは部屋を後にしようとする。


「じゃあ承太郎、ジョースターさん。おやすみなさい。」

「承太郎〜。隣にジョースターさんがいるんだからな。くれぐれも忘れて狼になるんじゃあねぇぞ〜。」


二人は振り返ることもなくそそくさと部屋を後にした。


「じゃあワシもそろそろ寝るかのぉ〜。承太郎、ちゃんと布団かけて眠れよ!」

「おい、じじい!てめぇワザとやっているだろう!」

承太郎の言葉を無視してジョセフは早々に電気を消して布団に潜り込んでしまった。


まさかこんなに己の精神力を試される時が来ようとは

「……やれやれだぜ」

自分の学ランの裾を掴みながらスヤスヤと眠る名前。
その手をはずす気にもなれず承太郎はそんな彼女を見てポツリと呟いた。