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銀河鉄道の夜
「僕きつとまつすぐに進みます。きつとほんたうの幸福を求めます。」
 ジヨバンニは力強く云ひました。
「ああではさよなら。これはさつきの切符です。」
 博士は小さく折つた緑いろの紙を、ジヨバンニのポケツトに入れました。
 そしてもうそのかたちは天氣輪の柱の向うに見えなくなつてゐました。
 ジヨバンニはまつすぐに走つて丘をおりました。
 そしてポケツトが大へん重くカチカチ鳴るのに氣がつきました。林の中でとまつてそれをしらべて見ましたら、あの緑いろのさつき夢の中でみたあやしい天の切符の中に、大きな二枚の金貨が包んでありました。
「博士ありがたう、おつかさん。すぐ乳をもつて行きますよ。」
 ジヨバンニは叫んでまた走りはじめました。何かいろいろのものが一ぺんにジヨバンニの胸に集つて何とも云へずかなしいやうな親しいやうな氣がするのでした。
 琴の星がずうつと西の方へ移つてそしてまた夢のやうに足をのばしてゐました。
宮沢賢治 著(青空文庫より引用)
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