私は、高野辺皐。

そして、大学の一期生である。

少々、お喋りが過ぎるとも言われたり。

同じ学校の北沢くんには、まだまだ高校生みたいだと評されているのだけれど。

まさか、まさか、お巡りさんに補導されるなんて思わなかった。

からかったり、ギャグで言われたりはしていたけれど。

誰か嘘だと言ってよ。

かなりの大打撃。ショック過ぎる。

中年のお巡りさんに連れられ、最寄の交番へ。

こんな時に、身分を証明するものが何もないなんて、最悪にも程があるっていうものだわ。

意気消沈していると、若いお巡りさんが奥から出てきて、親に電話をかけてくれた。

親が来るまで、暫し彼と談笑。

どうにか、大学生であることは信じてくれた。

教科書に感謝である。

二学期も後半に差し掛かるというのに、ツルツルとそれは綺麗に光沢を放つ教科書にだ。

談笑していてわかったのだけれど、若いお巡りさんは昔近くに住んでいた、薫お兄ちゃんらしい。

薫お兄ちゃんといえば、私の初恋のお兄さんである。

私が小3の時に、隣町に引っ越してしまった彼のその後の消息はわからなかったけど何と言いう偶然だろう。

彼も、私の事をよく覚えているという。

恥ずかしい、あんな事やこんな事を、数人のお巡りさんに知られてしまったのは完全に誤算だったけれど。

「今度また、一緒に遊んでみる?」

悪戯っ子みたいな笑顔のお誘いに、初恋が再熱したのは言うまでもなくて。

私の即答のOKに、終始笑顔の彼。

今日から、近くをうろつくことになりそうな交番で、懐かしいあの人とのデートの約束と、愛の礎を拾って帰った。



お題
交番で拾われる愛

藤紫のくちびるにも皐と北沢くんが登場しています*


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