「なぁ、清浦っていつも笑ってるよな」
何気ない一言が、俺の耳に届く。
幼稚園からの親友、腐れ縁でもあるのだが、ともかくも雪村は言った。
清浦多菜日(きようら たなび)とは、俺のクラスにいる女子学生だ。
清浦は、いつも笑顔を絶やさない。
だが、どこか影のある風があって、薄気味悪くも思えるのだが。
大概の奴は、いつも笑顔で明るい女の子としか見ていないようだった。
あの子は笑顔を振り撒くが、彼女の纏う雰囲気からか、特に仲のいい子もいないようである。
不思議ちゃん、という類ではあろうから、それも仕様のないことなのやもしれない。
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