清浦は昼休み、一人体育館の裏にいるらしい。
何故なのかは、知らない。
美化委員の奴らが、ごみの収集と集計の当番で体育館近くのごみ置場へ行く道すがらに見かけるとの事だった。
清浦は確かに、体育館裏にいた。
いたのだが、俺が清浦にどう声をかけていいのか決めあぐねてしまった。
――……
「よう、清浦」
無難に、無難に。そう心掛けて、第一声。
地面に屈み込む清浦の隣に、腰を下ろす。
清浦は、心底驚いた風で鳩が豆鉄砲をくらったような顔をしている。
その顔が可笑しくて、思わず吹き出した俺に、
「竹村くんじゃない、何のようなのかな?」
真っ赤な顔で言う清浦が、可愛いと本気で思う俺って一体何なんだろうか。
「清浦って泣いたりするの?」
と問えば、清浦は、
「竹村くんは泣くの?」
と聞き返してくる。
この質問、一瞬、返答に窮すという事を知る。
「……泣くね。最近はないけど」
無難な言葉にも、清浦は、お決まりの笑顔で。
「みんな言うんだけどね、泣かないのって。でもそれって、よくわかんないんだ」
「へぇ、清浦ってやっぱり変わってるな」
呟くように言葉を吐き出した。
「竹村くんの、涙の意味ってどんなものかな?」
指先で、シロツメクサの葉を摘みながら、四つ葉探しを始めた清浦は言う。
「悲しいとかはあまりないけど、悔しいとか、辛い時に泣くこともあるかな」
「じゃあ、私に涙なんていらないね」
俺の言葉に、清浦は晴れ晴れとした笑顔で言うのだ。
「好きな人と、今日はお話出来たもの」
いつものように笑う清浦の傍ら、俺は茫然自失してしまうのだった。
(ニコニコ、その笑顔に思考停止)
お題
じゃあ涙なんていらない。
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