――…
「ゔぅ゙っ」
声を絞り出して、瞼を開いた。
瞳に映るのは、ただ広い青空で。
頭がぼーっとする。
全身は冷え切り、凍えているのがわかる。
口の中は塩辛く、喉がヒリヒリと痛む気がする。
何が起きたのか。
どうしたんだったか…
思考するのを遮るように、クスクスと笑う声がした。
目線を横に向けると、水着姿の藤堂先輩。
ビキニ姿が、いやに海辺に眩しい。
そう思い間もなく、僕は思い出す。
(海で、溺れたんだった。)
しかも、先輩の目の前で。
「先輩が、助けてくれたんだからお礼いいなよ」
同じ学校の皐が、いつの間にか横にいた。
ノロノロと起き上がり、何とか正座まで持ち込んだ。
「あの…藤堂先輩ありがとうございました」
下げた頭の目の端に映る先輩。
今、ニヤリと先輩が笑ったのは、気のせいか。
「いいのよ」
ふふっと笑う、藤堂先輩は大人の女性だ。
さすが、大学のマドンナだ。
皐とは、大きく違う。
皐なんかは、まだ高校生となんら変わらない。
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mae : ato bkm