そのまま、清らかなる水に癒される。
水を全身にかけながら、久しぶりに声をあげて笑った。
その僕の傍らのあいつは、少し迷惑そうに翼をはためかした。
太陽がやっと東にたどり着いた頃、鶴は突然飛び立つ。
晩秋の澄んだ青い空の、深い深い蒼に溶けてしまいそうだと思った。
暫くすると、あの鶴は僕の傍らに戻ってきた。
クチバシ
嘴に青空色の小さな花を携えて。
その小さな蒼を、人はブルースターと呼ぶ。
なるほど、信じもしないくせに信じてくれなど、なんとムシのいい話なんだろうか。
ブルースターの花言葉は、信じあう心。
随分、タイムリーなその花言葉を思い返す。
そういえば、幼い頃に花言葉をたくさん覚えたりもした。
母さんと散歩ついでに、花を摘むのが好きなのが高じたのだったか。
喧騒に揉まれて、いつの間にか脆弱で貧しくなった心に、光が射したように思えた。
なんて清々しい朝なのだろう。
そんな、当たり前の有り難みを感じて、今日からまた、はじめの一歩を踏み出そう。
ありがとうと、さよならを君に伝えたら。
鶴が運んだブルースター
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