疑心暗鬼で、人間関係が破綻していく。

面倒だったんだ。他人の事を気にかけたりなんて。

色んなものに縛られて、馬鹿みたいだと思った。

そして、僕はここへ来た。

開発途中の田舎町。

その町の外れに、今正に埋め立てられようとしている湖。

その湖に、身を沈めようと思った。

しかし、静寂に包まれた森の中故に、妙に敏感になった耳が音を捕らえた。

羽ばたく音、ついで、着地した白い羽に包まれた生き物。

それは、紛れもなく鶴だった。

こんなところにも、まだ鶴が帰ってくるなんて。

胸がキュッと音をたてそうになる。

暫し、鶴を見つめていたのだが。

その鶴は僕に見向きもせずに、片足をあげた。

美しいシルエットが、月明かりに照らし出される。


【2 / 5】
 しおり 戻る
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -