疑心暗鬼で、人間関係が破綻していく。
面倒だったんだ。他人の事を気にかけたりなんて。
色んなものに縛られて、馬鹿みたいだと思った。
そして、僕はここへ来た。
開発途中の田舎町。
その町の外れに、今正に埋め立てられようとしている湖。
その湖に、身を沈めようと思った。
しかし、静寂に包まれた森の中故に、妙に敏感になった耳が音を捕らえた。
羽ばたく音、ついで、着地した白い羽に包まれた生き物。
それは、紛れもなく鶴だった。
こんなところにも、まだ鶴が帰ってくるなんて。
胸がキュッと音をたてそうになる。
暫し、鶴を見つめていたのだが。
その鶴は僕に見向きもせずに、片足をあげた。
美しいシルエットが、月明かりに照らし出される。
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