その窓辺に青い鳥


追いかければ、追いかけるほど深みにはまっていくの。

終いには、何を求めていたのか忘れそうなくらいに。

手が届く前に、壊れて消えてしまうよ。


窓辺には番いの青い鳥と、子猫が一匹、日なたぼっこをしている。

「シャボン玉でも飛ばそうかな」

呟く私などまるで気にもとめないような、啄みと、風のそよぐ音。

たまには、鳥かごを開けて見るべきか。

手を差し延べて、かごの扉を開け放つ。

それから私は、ほんの少しの間部屋をあけた。

その間に、羽ばたきの音が聞こえたけれど、子猫がそれを、パシリと叩く。

羽が毟られて、散らばった。

鳥が抵抗するも、子猫は体重をかけて、面白そうに尚も前足を繰り出す。

手加減などない殺戮に変わりゆく様を、私は眼前に据えた。

こんな時、どうしてこうも身体は動かないのだろう。

(こんな結末を迎えるのならば)

青い鳥は、かごの中の安全を、幸せだと思っていたのかもしれない。

自由を求めてなど、いなかったのかもしれない。

私の有難迷惑というそれだけで、命が一つ確実に絶えた。

番いのもう一羽はいつの間にか窓の外に消えていて。

人間に飼い馴らされた鳥は、窓のその先で果して生きていけるのか。

未来という恐れを知らない、生き物たち。

先へ行くことしか知らないのならば、悩まない。

そして、生きるための殺傷とその能力に罪悪感もない。

要らない知能を装備して、ガラパゴスな進化を遂げた脳みそをえぐられたように。

殺戮を前に、ただ立ち尽くすことしか出来ない私というちっぽけな人間は思考を紡ぐ。

――……

チルチルとミチルも、いつかは知るのだろうか?

残酷は時として、この世界のあるべき姿であるということを。




Chatelet様へ提出

お題 : 青い鳥
(童話モチーフ企画)

◆あとがき

青い鳥は、メーテルリンク作ですが、童話(特にグリム)は、元のお話は結構グロいのでそんな感じをイメージして書きました。


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