●○2●○

何時?
僕の生きてた時間が止まったのは…。
迫害?
何で僕がされなくちゃいけないの…。
光は?
太陽の光はたまには当たるさ
そんな光じゃなくて…
「生きる希望」と言う光が無くなってた。








「蓮!」

ボーっと空を眺めているだけの蓮(れん)を現実に戻したのは
虎之介(とらのすけ)だった。

「え?何…虎…」

「「何?」じゃない、せっかくこの時間は外に出れるんだ
空なんて見てないで何かしよーぜ」

虎之介は笑顔で言った。
…が
此所はそんな所ではない…
「迫害」で捕まった者達が入っている収容所なのだ
蓮も虎之介もその1人だ。

「虎…お前、元気すぎ…まったく、意味もなく……」

蓮の言葉を遮って虎之介は喋りだした

「元気とかじゃないぜ!」

今にも語尾に「キラーン」と付きそうな奴が何を言っているんだ…

と蓮は思った。
そして小さな声で呟いた。

「それを「元気」って言うんだよ…」







この収容所は、昼間は外に出ても良いと言われている
珍しい所。

「さぁ、もう時間は終わりだ、中に入れ!!」

看守が言っている。

「あー、ハイ…明日は晴れるかな?」

「んなの、皆 知らねーよ」

だよな、と虎之介は小さく、小さく笑った。
蓮はふと、柵の方に視線を感じ
柵に目をやった。
見ると、女の子が立って此方をみつめていた。
思わず蓮は彼女に頭を下げると
彼女もペコリと頭を下げた。
そして、後ろを向いて女の子はその場を後にした。

「可愛い…」

蓮はただ単に、
「もう一度会えるといいな…」と思った。

「何をしている?!
早く来い!」

「はっハイ!!」

看守にはバレていないようだった。
蓮は静かに胸を撫で下ろした。







「俺さ〜此処を出たらさ、弟と母ちゃん探しに行かなきゃいけないな」

部屋に戻っていた虎之介が
ポツリと蓮に言った。

此所は部屋の数が少なく、虎之介と蓮は相部屋なのだ。

「虎の弟って…6歳だよね?」

虎之介には弟が一人いる
6歳になったばっかりの
お兄ちゃんっ子の弟だ。

虎之介、13歳。
蓮、14歳。

まだまだ子供。

「母ちゃん結構さ体弱いじゃん…迫害で…捕まったりしてないと…いいなぁ…俺等みたいに……ね」

「…!」

蓮はハッとした。
泣きそうな瞳で、虎之介は蓮を見ている
虎之介はこんな顔はしない
蓮と一緒に此処に連れてこられた時
目が真っ赤になる程泣いていた。

何時もは、蓮よりも元気で、バカで…。
その虎之介がまた泣きそうな顔をして
蓮の言葉を待っているのだ。

蓮は自分の放つ言葉を気を付けながら
虎之介に言った。

「…ぼ…僕は、大丈夫だと思うよ
虎のお母さんは、体は弱くても
逃げているよ、多分…ううん
絶対に」

その時、虎之介はやっと笑った。
虎之介は誰よりも友達や家族を
「命」を大切にするものなのだ。

そして話をしている内に「死」の時間が来た。

部屋の目の前を
蓮と同い年位の男の子が通ってゆく。

「…今日はガス室での処刑は一人か」

看守は呟くように言った
虎之介は蓮に近付き、蓮にしがみついた
そして気付いた。

蓮が怖い顔をして看守を睨んでいる事を。

毒ガス室は 蓮の部屋の真横。
毎日、毎日 死にゆく者の声が聞こえ
毎日、毎日 虎之介は震える。
そしてまた今日も。

「出して!…ゲホッ
まだ、生きたいよ…
い………や……い………やぁ…」

壁を伝って声が響く。
その人の苦しみ、辛さ、もがき…。
虎之介は毎日 子の時間だけ蓮の胸の中に入る。
蓮も、震える虎之介をなだめる為に
背中を撫でる。

毎日、毎日、毎日毎日
此処に来て 僕は
生きているのか、死んでいるのか

「分からない…」

壁を伝う声は徐々に無くなり
虎之介は声が消え去った
強く強く蓮の服を掴む。
自分の手に爪が食い込み
傷付ける程に…。

そして、今日も
声が消えた――――。

prev next


TOP



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -