●○戻ってくる記憶●○



これは、鈴、蓮の生まれ変わりの話――――――。



「レン〜〜」

「リン、何?」

「見て、紙飛行機だよ」

リンの手には真っ白い丁寧に折られた紙飛行機が一つ乗っていた。

「ボク、紙飛行機って嬉しさと悲しさが胸いっぱいに広がるんだけど…」

「え?私は「始まり」って感じがするな」

そう言いながら、リンは紙飛行機を片手にレンの回りを走り回る。

「リン〜レン〜
新しい曲が出来たよ〜」

マスターの疲れたような喜びに満ちた声が響いた。

「ほら、リン!マスター読んでるよ
ボク等の曲だって、行くよ」

「あ、うん。待ってレン」

二人に手渡された曲はこの2つ




鏡音 レン「囚人」






鏡音 リン「紙飛行機」





二人の瞳からは涙が零れた。
なかなかそれが止まらない。
マスターはめちゃくちゃ慌てるし
ミクやKAITOはおろおろしている。

「あっれ?おかしいな」

リンは止まらない涙に慌てながらも
皆に大丈夫だよと気丈に振る舞っていた。

蓮は最後まで歌詞を見て気付いた。

「リン、来て!」





皆の心配をよそに、レンはリンを小さな部屋に呼び
三回深呼吸をしてから喋り出した。

「この曲は、ボク等自身の曲だ。」

リンは首を傾げていた。

「うん?私達の曲よ?」

「そうじゃなくて、これはボク達が前人として生きていた時の、曲だ…人生」

リンは、歌詞を読んでやっとピンときたのか頷いた。
その頃には二人の涙も止まっていた。

「この歌を皆の心に届けよう。
ボク達をわかってもらおう」

「レン、うん!」

心に響く、届く歌を―――。

















神様は言いました。

《二人はもう離れないように、二人で一つにしましょう》

と。双子になって戻って来ました。

《前世を忘れ頑張りなさい》

と神様は言ったけれど…
二人はやはり忘れてはいけなかったようでした。
レン(蓮)とリン(鈴)は「囚人」と「紙飛行機」を歌う事になりました。
二人は朧気にも、蓮と鈴だった頃の記憶を持ち合わせています。
…ですが、二人は離れる事はありません。

レンはリンが好きで、リンもレンが好きだから、双子だから、ボーカロイドだから…。
きっと今、生きているのが終わる時も二人一緒。
離ればなれは二度と無い。
悲しい思いは、苦しい思いは二度と無い。

リンとレンは思いました。

『この歌を蓮に鈴に届けよう。
自分の中の人へと響かせよう
「幸せだよ」って教えよう』

と。
蓮と鈴は聞いていました。
曲が渡された時に流れた涙は
蓮と鈴のものだから。



「リン、本番だ」


「うん。私達の歌を歌おう」


















〜囚人と紙飛行機。END〜


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