七夕-奇跡の届く日-2


隣に座った雅は
突然静かになり、真っ直ぐに黒板を見つめていた。
それにつられ、ぼくもきちっと座り直し
黒板を見た。
数秒たってから、雅はぼそっと呟いた。

「雅…何時か宙翔とこうして勉強出来る日が来るのかな?」

雅の思いもしない質問にぼくの胸がずきずきと痛んだ。

どちらともなく
顔を見合わせてる。

雅の目には涙が溜まっていた。
その涙が零れる前にぼくは雅を抱き締めた。

「………今、一緒に勉強しよう」

それがぼくに出来る最高の答え
雅は静かに僕の腕の中で頷いた。
雅は解っていたんだ、自分の体の事
きっと治らないって


―――残り時間、2時間。


それから二人だけの勉強会をした。
時間が残った2時間。そろそろ屋上に行こうか。

「雅、これで勉強は終わりにして
天の川見に行こう。」

「天の川!うん行こう!」

屋上に向かってぼく等は走り出す
屋上の扉を開ける前に雅に目を瞑ってもらった。
ぼくもなるだけ上が見えないように下を見て歩く。

「わくわくするな」

「うん、ぼくも」

雅はさっきからずっとニコニコしている
この顔を見ているだけで
もうすでに喜ばしい。

「雅。目を開けて、ぼくの目を見て」

雅と目が合う。笑顔になる。
この日をずっと待っていた。

「せーので上、向こう」

こくこくと満面の笑みで頷く雅に
ぼくも笑みを返す。

「いくよ、せーの!」

二人で一緒に上を向く
隣でわぁと小さな声が聞こえる

「宙翔!凄い、星が、川になって」

雅は空に手を伸ばして天の川を掴もうとする仕草をする。

「うん。これを雅と一緒に見たかったんだ…
この、素晴らしい景色を…」

星が溢れかえり、川になっている
天の川がこんなに綺麗だと思わなかった。

きっと雅と見ているからだ。

「雅も、宙翔と見たかったんだ
ずっと、見てみたかったんだ」

「ぼくと、雅で見るから価値がある
雅、横になろう首も疲れない」

二人で横になり空を見つめていた

「宙翔のおかげで夢がいっぱい叶った1日だわ
ありがとう」

「雅」

隣の小さな手を握りしめ
ぼくは空に向けて指を指す

「誰にもわからないように
ぼく等、二人の思い出にしよう。」

雅とぼくはいったん顔を見合わせていた
それから、雅は顔を上に戻した。

「宙翔、雅ね、入院してても宙翔がいたから何があっても楽しかった
宙翔のおかげだよこれも思い出だよ」

ほろっと気付くとぼくの目から何かが零れた。
雅の手を握る力が強まる。

うっすらと雅の体が薄い。
もう時間が近い。

「雅、ありがとう、ありがとう
雅といた時間が一番楽しかった」

「雅も、宙翔といた時間が一番よ」

雅が握り返す手の柔らかい感触
雅が空から目を離しぼくを見つめる

「雅は、宙翔が大好き」

「みやっ――!」

そう言ったとたんに
ふっと手を握っている感触がと雅が消えた。

「ぼくも……雅が…っ…好きだ」

最後は、雅は天の川ではなく
ぼくを見ていてくれた。





ぼくは天の川に向き直った

「可笑しいな、スッゴいボヤけてるや………………う、うわぁぁぁ…っ……ぁぁぁ…」



一番美しい夜だった。
一番美しい人だった。

雅の見たがっていた天の川。
見られて良かった。
ちゃんと約束が守れて良かった。

きっとあの夜。彦星と織姫よりも奇跡的で幸せだったのはぼく達だった。



今年の七夕は一生の宝物の思い出。
















――――後書き。
七夕の殴り書き。
七夕の短冊に願い事を書けば叶うって言うからさ
書いてみた。願い事。
それが叶ったお話。

雅と宙翔の年齢は決めてないので
皆様の好きな年齢でお読みください。


2012年 7月7日

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