扉の向こう側。




彼との約束。

『私は、ここにずっと住んでるからまた、会いにきてくれる?』

私は、小学校の頃
大好きだった彼が転校してしまうと聞いた時そう彼に言っていた。

そして小さく彼は微笑み頷いた。

『まってるね…』

まだ、小学生で何もわからなかった頃
私も彼も幼かったし、私はバカだった。

今年、私は高校生。
社宅だったこの家を後にしなければならないんだって親に教えられた。

正直言って…嫌だ
彼に言っちゃったし…。

『待ってるね』って

親は『相手も小さかったんだから覚えてないよ』って言うけれど…
私は、それでもこの家を離れたくなかった…

彼を信じて待ち続けたい。
でも、私はあの時よりは頭が良くなったからわかるんだ
彼は来ないって…
幼かったから私の事なんて覚えてないだろうし
なんせ、私が好きなだけだったから…。

そう、ただの長い片想い
家を変えると共に忘れられればいいのに…。


















引っ越し当日に
お父さんに言われた。
「この家は古いから解体するんだそうだ」
この家の前を通るたびに思い出すと思ってた彼との思い出
それも駄目みたいだ。
でもこれでちゃんと忘れられそうだ…

神様が『ちゃんと諦めなさい』って言ってるみたいに

何もかも消えていく。

引っ越し先は遠くないから
お父さんに頼んで自転車だけ戻してもらった。

「私、もう少しだけ思い出に浸ってく」

二人とも納得してくれたみたい
車がどんどん離れていく。





暫く、私は空っぽになった自分の部屋を窓に寄りかかりながら見ていた
太陽が温かい。

なんか、うとうとしちゃうなぁ
結局…彼も来なかった…
今日で………踏ん切り……を……

瞼を閉じると同時に一粒だけ
涙が零れた。

















ヴヴゥッ
ケータイのバイブが鳴っている

「あれ、私…寝ちゃったの?」

起き上がり、窓を見れば夕日が傾いている…
ヤバい、怒られる





ピンポーン


物が何にもないから
インターホンがやけに響いて
ビックリした

お母さん忘れ物でもしたのかな?
それとも私が遅いから心配してくれたのかな?


何時ものように玄関を開ける

「はーい…ごめん、今から向かおう…と……」

前に立っていたのは
お母さんでもなく
お父さんでもなかった。

真っ黒の髪が夕日に照らされキラキラ輝いてる。
真ん丸な瞳の男の子。

寝惚けてるのかな?
一回玄関をしめようか…

きぃと鈍い音がして
それは私がドアを閉めた音じゃなく
目の前にいる男の子が“開けた”音だった。

「……今、戻ってきた…
俺の事…覚えてくれてる?」

私はもう駄目みたいだ

「……〜〜〜〜!」

頷く事しか出来なくて後は涙が止まらなかった。

夢じゃないよね?

私がひたすら泣いていたら
彼は静かに抱き締めてくれた

男の子の腕だった
声も低いし、身長だって私よりずっと高くなっちゃって……色々違う。
あの、可愛かった面影なんて全く無いけど私にはわかる。

「ただいま、待たせたね///」

「ひっく……お帰りぃ〜〜」

ハハって彼は笑った
顔が真っ赤だったけど。

間に合った。
私はもうこの家の住人じゃない。
でも、ギリギリで彼は来てくれたの
ありがとう。

「ずっと好きだったんだよ
今でも、これからもずっと」

彼は耳まで真っ赤だったけど
小さな声で

「俺も、好き」

そう答えてくれた。

やっぱり彼の微笑みはあの時のまま変わってはいなかった――――。
















―――後書き。
うん。ベタ。ベタベタだね。
私の親友が社宅から引っ越したから思い付いた短編でした。
個人的にはベタベタ大好き。
いいね〜成長した男の子
女の子も純粋に彼を待ち続けるって凄いよね。
男の子は偉い。本当に偉い。
後日談を言うと…男の子は家が空っぽなのに驚いて+主人公が引っ越す事にも驚く。住所を聞いて、自分家の隣だって気付いて大喜び。
みたいな、ベタがまた続きますwww

2012年 1月3日




prev next

- 40 -






「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -