―――探し者―――


また僕は、遅刻寸前に学校に着いた
相当、桜の木を眺めていたみたいだ
足が早くて良かったと
思わないではいられない。

「おはよう、皆」

皆に声を掛けながら自分の席につく
教室を見渡してみて気付いた
清水と知聡がいない。

知聡が居ないのは日常茶飯事
知聡は遅刻魔だから
清水が居ないのは少し気にかかる
また、風邪でも振り返したのだろうか?

そんな事を考えてしまう。

…一応、知聡にはメールを送っておこう

その時、一時間目の授業のチャイムが鳴ると同時に、理科の先生が入ってきた。

先生は一つ咳払いをすると
静かに教科書を開く

先生の咳払いは授業始まりの合図
授業が始まる。


















授業も4時間目が終わり
今は昼食。僕は委員会議室でプリント整理をしていた
未だに、知聡と清水は顔を見せないまま
どうも僕は、二人は休みだとは思えない。

知聡は休む時には必ず
僕には連絡をくれるからだ
清水だって 担任には連絡をするはずだ
その担任さえも
『お、今日は清水と高梨は休みか?』なんて…

しかも知聡はさっき送ったメールを返してこないし
いったいどうなってるんだ?委員会議室で黙ントを纏めながら
僕は何度も何度もケータイを見てしまう

気晴らしに何処かへ行こうか…


その時だった


「しょ〜〜〜〜〜う!!!」

「!!!」

委員会議室を出ようとした時に
名前を呼ばれた
呼ばれただけなら振り向いたり声をかけたりするが
呼ばれている位置がおかしい
真上から声が降ってきてる…

「なんだょ、輝翔。無視かよ、輝翔」

若々しい少年の声
多分、高校生じゃない

上に居たであろう何かがストンと
下に下りてきた

可愛らしい、男の子だ…
クリクリの淡い紫の瞳に
ウェーブ気味の若草色の髪

「何で無視するかなぁ〜
ぼく、まだなぁんにもしてないよね?」

「君は、誰だい?何処から来たの?」

僕は迷子の子猫に尋ねる犬のお巡りさんの気分だ
男の子はクスクスっと笑った。

「つまんない質問だね、輝翔
もっと、もっと、もっと!ぼくを楽しませてほしいなぁ〜あははは」

ゾクッとした
男の子の瞳がぎらぎらと光り僕を見つめていたからだ。

僕は一歩後ろに足を下げ後退りをしようとした
もはや無意識に
一歩後退りした時、シュッと空気を切る音と共に僕はバランスを崩し転んだ。
「痛っ」

転んだと同時に
ずしっとお腹に何かが乗った
乗っているのはあの少年だった

「何?こんなもんなの?
つまんないよ〜もっと張り合おうよ
輝翔いい匂いだしさ、きっと美味しいから
もっと楽しんでから…」

僕の両手首を片手で掴むと
男の子は僕の耳元てボソっと呟いた

「…殺したいなぁ」

「な…にを…」

手首をいくら振りほどこうとしても
男の子の力は強く振りほどけない
140くらいの身長の子のこの子に
いったい何処にそんな力があるのだろうか?

『殺したい』その単語のせいで
怖いと言う感情が芽生えてしまった

「放せ!」

とにかく暴れていると
いつの間にか、組み敷かれてしまった。

「暴れんの好きだね」

僕の上で男の子は笑う
なんかもうどうしたらいいかわからない
とにかく、両手首を掴まれ
男の子はお腹に乗っかっている
そんでもって、僕は異常に暴れたから
息が苦しくて、とにかく男の子の下で
必死に喘いでいるだけになっていた。

とにかく、息が苦しい…
それのせいで力が抜けていくんだ

「…っは…は……ぁ…のさ…」

「なぁに?もう暴れないの?つまんないのぉ」

「……どけ……苦しっ……はぁ…」

男の子は降りる様子もなく
それ以前に、息のしずらい場所に体重をぐっと掛けてくる

「ふふっ…可愛い顔
ぼくねぇ、こういう風に人が苦しむ顔が好き…だぁい好き★
エロいし、助かりたくて許しを乞うだろ?「助けて〜やめてくれ〜」って意味わかんないよね」

ふふっと男の子は蔑むように笑う

「………はっ……あぅ……」

男の子は静かに手首を掴んでいた手を離すと
その手を僕の首にそっと添えた
首を絞めている訳じゃない
添えているだけ。

「なのに、おかしいよね
輝翔はどうして何も言わないの?
もうそろそろ、ほんとに苦しいはずなのに…
ねぇ、死んじゃってもいいの?」

「…………はっ………」

僕は何も言わずに首だけのろのろと横に振ると
男の子は静かにぼくの上から降りた
僕は大きく息を吸うと、数回咳き込む。

「何なんだよ、輝翔
ぼく、もっと輝翔は弱い奴だって聞いてきたのになんか凄く強いじゃん」

僕は舞桜の話を思い出していた
「深淵」この子はきっと「深淵」だ…

息の落ち着いた僕は
思い切って聞いてみた。

「君は、「深淵」なの?」

「そうだよ、ぼくが「深淵」で何が悪い?!」

急に怒った表情と共に声も荒げる

僕は聞いちゃいけない事を聞いてしまったのだろうか?

はぁと溜息を付いた男の子は
僕の真っ正面に座った。

「ぼくは、八尋【やひろ】
闇に記されし金色の者、深淵だ
輝翔は特別に八尋って呼んでもいいよ
ほんとは殺すつもりだったけど
なんかもういいやぁ」

八尋はクスクス笑いながら
立ち上がり

「ばいばぁ〜い」

と僕に向かって手を振りながら
ニコッと爽やかな笑顔で笑って
委員会議室の窓から消えていった。

八尋が消えてから急に疲れが出た。

あぁ、疲れた

昼休み終わりのチャイムが鳴る
それと同時に

〜〜♪〜〜♪〜〜

ケータイが鳴っているけど
疲れているからか僕はケータイを取る前に意識を手放した。







「今日の目標は輝翔であって輝翔じゃないからね」

八尋は小さく笑った。















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