―――輝翔の決心―――


次に舞桜は「決まり」を話始めた。

「「闇」「光」に選ばれた者は
双方、近付いてはならない
傷付けてはならない
そう言う決まりがあるのですが…
時たま「闇」に選ばれた者の中に
「深淵」に堕ちてしまう者が居るんです
人を安易に傷付けてしまったり
自分の生涯が「闇」で終わる事に絶望してしまった人の事です」

「…」

漫画の中でしか起こらなそうな事を
淡々と舞桜は語る
僕は静かに息を飲んだ。

「光には「深淵」に堕ちてしまった者を止める義務がありました
「深淵」は「深淵」でチームを作り
私達、光を攻撃し出してきました
深淵の攻撃を受けた光は深淵になってしまい
なかなか深淵の数が減らないのです」

「ねぇ、どうして「光」は攻撃されなきゃいけないの?」

素朴な疑問を僕は舞桜にぶつけてみた。

「「光」の存在が邪魔なんです
「深淵」は人に危害を出しますから
それを阻止されるのが嫌なんです」

僕は静かに頷いた
舞桜は大きく息を吸った。

「これからが本題です
輝翔と初めて会った時
貴方は、私が見えましたよね」

「うん、それが?」

僕は答える

「普通は見えないんです
人には、たまに「光」の素質が強い人には見えたりしますが
触る事までは出来ない
だから、輝翔は「光」の素質が強い、いえ
「光」ではあるがまだ能力が未発達の為に光ではない者だったんです」

「僕が「光」?」

どんどん頭が空回る

「私と触れてしまった事によって
「光」に近い能力が輝翔に入ってしまったんです
でも、実際は輝翔は「光」ではなく
「疑似した光、擬似光(ぎじこう)」だったんです」

「疑似した光?擬似光?」

「光の能力を人には与えられないんです
ただ、感情が激しく揺さぶられた時
その光は貴方を殺してしまうほど強力になってしまう
それに、今、輝翔が発している光…輝翔自信には見えませんが「光」として
「深淵」が狙っているんです
輝翔が発する光はとても強いから
さっさと殺そうと…」

「感情が揺さぶられるって?」

感情が揺さぶられるとはどういう事だろう
僕の持っている感情は
全て、「闇」に一致してしまうから


「普段の生活では無いから安心してください
「深淵」の与える「闇」に当てられなければ平気です
…だから」

「私に輝翔を救わせてほしい
輝翔に「平凡」を返したいんです」

その舞桜の言葉を聞いた時に
もう僕が「平凡」ではなくなった事に
確信を持った。

そして、「平凡を返したい」と言った舞桜の話
嘘ではない事
僕を守りたいと思っている事
それが伝わって来た。

何故だろう…
舞桜は僕の敵だった筈なのに
何故、舞桜の話が信じれるんだろう
不思議だ…



舞桜は僕が答えるのを
真剣な眼差しで待っている
その眼差しの中に濁る一点の光が見えた気がする。

その一点の濁った光を
僕は包んでみた。

「ねぇ、舞桜もしかして舞桜は
「自分のせいで輝翔がこんな事になってしまった」って考えてる?」

僕の思いもしなかった答えに
舞桜は体を固まらせた。

「私が、悪いんです…
輝翔に恨まれようが、殺されようが
全ては私の責任で
だから私は、輝翔を助けなくちゃ…」

「それは違うよ」

僕は低い声で舞桜に言った
だって、そうだろ?って

「僕等はただぶつかっただけ
そうじゃなかったとしても
これは、運命で決められているんだよ」

運命なんて信じた事無い。
だから…

「その「運命」自体を僕が変えてしまおうと思ってるよ
舞桜はそれの手助けをしてほしいな」

決心するしかない
此処で立ち止まったって此処で泣いていたって
此処で舞桜を責めたって
今の現状が変わる訳じゃない。

「ありがとう、輝翔」

そう言いながら
舞桜が僕を柔らかく抱き締めるから
何故か僕は照れた。







「僕の「平凡」を舞桜に預けるよ」







舞桜の肩越しに見える
舞桜の入って来た窓
窓の外で桜が
はらりひらりと舞っていた。








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