―――舞桜―――






夢を見た

一言で言うと

幸せな夢
温かい、そんな夢。











目を開けると
僕の右手を握ったまま舞桜も眠っていた

僕は目を開けた時
全てが夢であれば良いのに…
とそう、考えていた






けれど、全て現実だった。






先程の体のだるさや
頭の痛さは無い
舞桜が何かしたのだろうか?


じっと舞桜を見つめながら
不思議な事に今更気付いた。


桜が咲く頃って言ったってまだ寒いのに
ワンピース?


上に布団を掛けてあげようと思い
右手を離そうとするが
舞桜は離してはくれない…。

このままじゃ
舞桜が風邪をひいてしまう

僕は舞桜を起こす事に決めた。

「舞桜…
起きろ、風邪ひくぞ?」

僕の言葉が聞こえたのか
舞桜は身動ぎをするが
起きはしなかった。

仕方なく、舞桜の肩を揺すり起こす

右手は握られたまま
「うーん」と軽く唸っただけの舞桜
全然、起きない

「舞桜、舞桜!」

語尾を強めて言うと
眠たそうに舞桜は目を開けた

「………輝翔?調子は?」

起きた最初の言葉がこれ
まだよくはわからないが
舞桜は良い子なのだろう

「…大丈夫だよ、それよりも舞桜が風邪をひいちゃうよ?そんな薄着で…」

繋がれた右手は温かいが
露出された肩を触った時は、ひんやりと冷たかった

「大丈夫なんです
私は生まれてからこのままですから」

ニコッと、人懐っこい笑顔で舞桜は言った

「生まれてから?」

どういう意味だろう?

右手からするりと舞桜の手が抜ける
暖かさもじんわりと消えて行く

舞桜はすくっと立つと
さっき、自分が入ってきた窓に近付く
そして、真剣な目をして
僕を見た

「私の話を、ちゃんと今度は真剣に聞いてくれますか?」

僕は頷いた、頷くしかなかった
僕は僕なりに僕の「平凡」を守るのに必死だった
なら、崩れ始めた「平凡」を繋ぎ止めるため
舞桜が鍵なのではないのかと。





でも、僕は震えてる。





また、「平凡」が壊れてしまったら?

昨日、今日あった全ての事は
「平凡」ではなく「非現実」なのだ
最初は舞桜のせいにした。
けれど、逃げてるばかりもいられなくなった。
「非現実」は僕を追ってきているのだから。

舞桜が僕の「平凡」を壊す方だとしたら?
僕が、あの人懐っこい笑顔を
僕の「平凡」を守る為に消さなければならない。



だから、震えが止まらない…。



「怖いのは、嫌だ
辛いのも、嫌だ
悲しいのも、嫌だ!
「平凡」じゃない毎日なんて僕は、いらない…」

僕は、声に出していた
「嫌だ、嫌だ」と子供のように。
両手を、耳を塞ぐように頭に持っていく
過去を思い出してしまいそうで
思い出したくないが為
頭を横に数回振る。

舞桜は僕に近付き
静かに僕を抱き締めた。



あぁ、
やっぱり、舞桜は暖かい。




「私が、守ります
苦しくさせません
辛くさせません
悲しくさせません
私に…輝翔の「平凡」を預からせてもらえませんか?」

あーあ
女の子に「守る」なんて言われてる男の子情けないなぁ。

そして思った
もう今の僕は「平凡」じゃない事
預けてと言った舞桜が承認だ。

だから…
話を聞こう

「舞桜…このまま話して」

僕のその言葉に舞桜は何も言わずに
話し出してくれた

抱き締めながら。
僕は、少し泣きそうだった。


舞桜はこう言った。

「私は、光」

「光?」

僕は問う

「そう、簡単に言うとね本当は「光に記されし耀き(かがやき)の者」らしいです」

僕が、舞桜の肩をそっと押すと抱き締められていた僕の体から舞桜が離れる
舞桜の目が「もういいの?」と言っているようで僕は頷いた。

「まず、私の事を説明しますね」

舞桜は僕の目を見て
ニコリと微笑み 話を始める

「私は、闇とは反対の「光」に選ばれた者です
光と言っても私の光は
人々の力になる物です…例えば
「幸せ」「喜び」「笑顔」「楽しさ」
私が居るだけで回りに幸せを与える役目があったんです
でも、「闇」に選ばれる人もいて
闇が人々に与える物は
「不幸」「悲しさ」「苦しさ」「涙」
その闇に選ばれた者が
私達、光を滅しようと動いているんです」

舞桜はそこで言葉を区切り
息を吸った



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